事業構造を改革する「One Tempo」 実店舗の購買体験をデジタルで拡張しLTV向上を
さらに口脇氏は、「One Tempo」が目的としているのは「DXソリューションの導入だけではない」と語る。先が読めない時代の変化に、柔軟に対応し得る事業構造の構築こそ、同ソリューションが目指す支援の姿だ。
「VUCAという言葉にも象徴されるように、変動し続けて先が見えない状態が現代の特徴だと言えます。業界外からデジタルディスラプターが突然現れたり、コロナ禍のような予想もしないパラメータが発生したりと、市場の予測が困難になる中、それを受け入れて事業構造や戦略を柔軟に組み直していくことも大切です。たとえば、商品やサービス開発で言えば、長期間かけて準備したものが実際にリリースされた際、準備期間に市場のニーズが変化している可能性があります。であれば一度リリースした商品やサービスを、ニーズに適合するように調整していくほうが賢明だと言えるのではないでしょうか」(口脇氏)
「とくに不可逆的に進化していくデジタル分野においては、挑戦するリスクよりも、しないリスクのほうが高いと言えます。その意識の違いによって勝ち組と取り残される組で、大きな格差が生じるのは間違いないでしょう。早くから取り組めば知見もデータも溜まります。また、たとえ失敗したとしてもゼロではなく、アドバンテージとして残り、次の施策に活用できるチャンスが広がります。これまで日本企業は、準備万端に計画して着実に実現するという形で成功してきたところが多いため、意識改革が難しい部分もあるかと思いますが、今後はこうした姿勢を持つ重要性がより高まっていくと考えられます」(柴田氏)
そして、実際に施策を考案する際には、「デジタルを活用してLTV(顧客生涯価値)向上を目指すこと」が重要だと柴田氏は続ける。たとえば、実店舗でコーヒーを飲み、気に入った顧客が同商品をECで定期購入できる環境を構築。さらに、リアルの「コーヒーの入れかた教室」を開催し、動画でも配信を行うなど、リアルとデジタルをまたいだ購買体験の最適化によって企業への愛着を高めていく。こうして実店舗で一度コーヒーを飲んだ購買体験をデジタルで拡張することで、結果としてLTV向上につなげることが可能となる。
「顧客接点をデジタルによって持ち続けることは、購買体験価値の向上だけでなく、商品開発においても大きなアドバンテージとなります。『良い商品を作れば売れる』とはいえ、そこにデータの収集や分析など、デジタル活用があるかどうかで、ローンチの速度や品質も大幅に変わる可能性があります。また、店舗スタッフの効率的な配置や評価など、実店舗の最適化にも大いに貢献するでしょう」(口脇氏)