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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

季刊ECzine vol.10特集「Change to EC First~売るを変えるとビジネスが変わる~」

ECでの実績あってこそ 全方位に販路と顧客接点を広げるAnker

 Amazonでモバイル関連機器等の販売シェア1位を誇るアンカー・ジャパン。顧客視点に基づく緻密な販売戦略を聞いた。

 モバイルバッテリーやケーブル、ポータブルスピーカーなど多彩なハードウェア機器を展開するアンカー・ジャパンは、販売チャネルを大手ECモールに集中させ、飛躍的な成長を遂げてきた。とくにAmazonでは多くの製品でトップシェアを誇り、典型的なD2Cの成功者と言える。

 しかし、創業6年目の2018年5月に自社直販の公式オンラインストアを立ち上げ、翌6月からは南青山や横浜などに続々と直営店をオープンするといった施策を打っている。

 あえてAmazonに安住せず、新たな販売チャネルを開設するのはなぜか。アンカー・ジャパンのマーケティング&セールス部門の責任者であり、躍進の立役者といわれる執行役員の猿渡歩さんに話を聞いた。

アンカー・ジャパン株式会社 執行役員 事業戦略本部 統括 猿渡歩さん

ユーザーファーストなモノづくりの要「カスタマーサポート」

 2013年の創業以来、アンカー・ジャパンは販売チャネルをモール中心に展開し、とくに創業当時は売上のほとんどがAmazon経由であったと言う。Amazonに集中した理由を、猿渡さんは「最少の人的および物理的リソースで事業を開始するため」と説明する。

「Amazonは集客から販売、請求までのワンストップの仕組みがあり、さらに『フルフィルメント by Ama zon(FBA)』の利用で、配送まで一括で対応してもらえます。これらのメリットはたいへん大きく、実際にAmazonがサービスを展開している他の地域では、現地で人や倉庫を十分に構えなくても、Ankerは高い売上シェアを獲得できています。アンカー・ジャパンもAmazonを利用することで“持たない”スタイルをとってきました」

 Amazonでの売上アップを目指してアンカー・ジャパンが行ったのが、「負けている理由を見つけて打ち手を考える」という地道な方法だ。売れている他社製品を観察し、それに勝るようスペックや価格などの調整を行う。判断の根拠はカスタマーサポートに集まるユーザーレビューである。

「『イヤホンが手持ちの製品と合わない』『LEDが見にくい』などのお客様の声をもとに、できるだけ迅速に改善するように心がけています。さらに製品開発・製造にも、『レビュー&改善』に基づくアジャイルな手法を取り入れました。まずは安全性を担保した上で、自分たちの仮説の中で製品を作ってローンチし、ユーザーの反応が良ければ、スペック違いやカラーバリエーションを増やしていくというわけです」

 この時、さまざまなユーザーの声を的確に製品・サービスへと反映させるために、重要な役割を果たすのが「カスタマーサポート」だ。市場のニーズを直接聴ける窓口であり、接遇・対応で好印象を与えることでアンカー・ジャパンのブランディングにも貢献する。

「カスタマーサポートは大きな組織ではバックオフィス的になりがちですが、当社では常に前線にあり、お客様の問題解決を目的とした権限委譲がなされています。たとえば、トラブルでお困りのお客様にはスタッフの判断で代品をお送りしたり、ネガティブなレビューが多ければ『ここを改善して』と開発や製造側に直接進言したりしています。Amazonの売上と相関する星のレーティングやレビューの内容は毎日確認し、週次でも詳細に分析を行って各部門にフィードバックしています」

 そうして集約された声が活きるのも、企画・開発・製造での徹底した情報管理ができているからだ。改善提案はすぐに開発・製造部門に届けられ、直せるものから直される。必要があればハードウェア設計にも次のタイミングで修正がかけられる。こうした判断はすべて現場で決定される。「お客様の期待に応えられていないと思われる部分はすぐに直すという文化が醸成されており、フィードバックはごく当然に捉えられています」

 マーケティングやセールス戦略、プライムデーの企画設定も、ほぼすべて日本で判断し、本国に“お伺い”を立てることはほぼないと言う。各国のユーザーによって反応が異なり、それを理解できる人が対応すべきという判断からだ。

「私自身、まったくECの経験がない中でやってこられたのは、ユーザーに良い体験をしてもらうことを第一に考えてきたからだと思います。ECは店舗での販売に比べて、取得できる数字も多いため、アクションまで落とせるぐらい正しく因数分解できるか、元となるデータを正しく使えているかにかかっています。あまり効果がでていなければ、仮説かデータ検証に何かしらエラーがある可能性があり、常に見直し最適化していくことが大切であると考えています。またEC事業の難しさは、マーケティングなど別部門との連携が不可欠なことでしょう。どのように製品をPRしていくのか、他販路との価格バランスは崩れていないかなど、EC単体で戦略を考えるだけでなく、広い視野で全体を設計することで、より効果的にECの売上も伸ばせると思っています」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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