SNSのインフルエンサーとコラボレーションして、新たな商品を作り上げるといった流れが起きている。フォロワーの多いインフルエンサーなら、SNS上で発信すれば即完売といったこともめずらしくないようだ。
そうした状況下で、クリエイティブな発信を続けることで結果インフルエンサーになっているクリエイターがオリジナルのアパレルブランドを立ち上げることができる新たな仕組みが業界の注目を集めている。ファッションD2Cプラットフォーム「picki(ピッキー)」がそれだ。
同社は2019年5月に総額約6,000万円の資金調達を実施し、注目を浴びた。それも、アパレル企業ではなく、サイバーエージェント・キャピタルなどネット系企業を出資元としている。pickiが描くD2Cアパレルの世界とは。同社CEO 鈴木昭広さんに話を聞いた。
韓国アパレル業界から省みた 日本アパレル業界のコモディティ化
pickiの仕掛け人である鈴木さんは、母親がアパレル関係の仕事をしていたことから、韓国でアパレルのOEM、ODMを請け負う会社を興した経験を持つ。事業は順調だったが、アベノミクスによる円安の煽りを受け、数千万円の借金を抱えたまま日本へ帰国した。再び同じ業態で起業し借金を完済した経験から「これまでと同じようにアパレル事業をやっていても未来はない」と実感。ビジネスの知見を広げるために1年半をかけて50もの国を周り、シリコンバレーやテルアビブといったIT先進都市の起業家に会いに行った。
「何となくITの分野で事業をしようと考えていたのですが、僕の経歴を伝えると『日本のものづくりは素晴らしい、これからはリアルにITを絡めたビジネスがメインストリームになっていく』と言ってくれる人が多かった。ちょうどアメリカではD2Cの取り組みが流行っていたので事例を調べてみたところ、僕がこれまでやっていたことをアレンジすれば同じことができると思った。そうして日本に戻り、2017年5月にpickiを立ち上げました」
起業続きに見える鈴木さんの経歴だが、過去に韓国のアパレル企業へ入社し、日本向けに輸出を行っていたこともある。売れるものを作ろうとするあまりコモディティ化する日本アパレル産業の限界を感じ、1年と経たず辞めてしまった。
「韓国の卸問屋が集まる東大門市場は店の入れ替わりが激しいものの、クリエイターが常に新しいものを作って売る循環ができています。日本は人が集まる大型商業施設などに出店しようとすると一定の売上基準を満たしている必要があるので、商品づくりで挑戦ができません。そういうマス的な流れとは真逆の事業をしようと思って会社をつくりました」