ニーズが高まる多言語対応 越境EC構築で解決すべき3つの課題
2014年3月に設立し、Webサイト・アプリ多言語化ソリューション「WOVN.io Suite」を展開するWovn Technologies株式会社。「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げ、異なる言語へのアクセスを容易に実現することで情報格差の解消に取り組んできた。
主軸サービスとなる「WOVN.io」「WOVN.app」は、Webサイト・アプリを最大43言語、76のロケール(言語と地域の組み合わせ)で多言語化し、母国語による「新たな顧客体験」を創出するソリューションだ。これらを用いて元言語のWebサイト・アプリをひとつ作るだけで、自動的に多言語展開し、翻訳の修正も同一プラットフォーム上で行うことができる。これまでに翻訳したページ数は800万に上り、導入サイト数は1万8,000以上、年間アップデートも250回と頻繁に行われており、常に最新のサービスが提供されている。
また、多言語化APIソリューション「WOVN.api」では、HTML化されていない情報の多言語対応も実現。メールやクラウド、チャットボット、サイト内検索連携、DB連携なども容易に実現する。
近年、在留外国人向けの交通機関や生活インフラなどの情報サービス、製造業の海外展開はもちろん、製品マニュアルや外国人従業員向けイントラネットなどのコミュニケーションツール、越境ECなど、さまざまな事業者・組織で多言語コンテンツの活用は急速に広がっている。しかし、課題が多いのも実情だ。ここで秦氏は、越境ECを例に挙げながら3つの課題を紹介した。
1. 自社構築における高いハードル
越境ECでは、言語、法律、決済、配送などさまざまな面でコストやリソースなど意識すべきポイントが多数存在する。具体的には次のとおりだ。
- 言語:翻訳を行うことに加え、翻訳した内容でWebサイトを構築する必要がある。機械翻訳を活用する場合は、誤訳のチェック、更新・運用時の調整なども欠かせない
- 法律:EUのGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)など、国・地域ごとに異なる個人情報の取り扱いには注意が必要だ。抵触すると莫大な制裁金がかかる可能性がある
- 決済:中国ではAlipayやWeChat Payなどの二次元コード決済、アメリカではオンライン決済サービスPaypal、台湾はコンビニ振込が主流といったように、国ごとに好まれる方法が異なる
- 配送:国内配送よりも時間やコストがかかるだけでなく、国によって通関にかかる日数が異なるため、事前に顧客への明示を行う必要がある
2. 自社構築における集客の難しさ
モールであれば出店初期からある程度のアクセスを見込めるが、自社構築の場合は海外SEOやSNS広告などを組み合わせて独自に集客する必要がある。決済と同様、国によって集客、海外SEO、SNS広告などの事情は異なるため、注意しなくてはならない。
たとえば、検索エンジンのシェアは中国では百度(バイドゥ)、ロシアではYandexが1位となっている。SNSシェア1位については、中国ではWechat、香港ではFacebook、韓国ではKakao Talkといったように国ごとにさまざまだ。また、チャネルだけでなく、色やデザインなども好まれるものが異なる。
3. モール出店における情報資産化
各国でメジャーなECモールに出店することも選択肢のひとつだが、そこには「顧客情報の資産化」という課題が存在する。購買データや会員情報など出店者が取得できる情報には限りがあるため、顧客情報の分析・活用が困難になってしまう。