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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2021 Summer レポート(AD)

多言語対応で海外売上比率5倍の事例も 専門人材なしで迅速に対応、コスト削減も両立する裏技を解説

 越境EC、多言語対応など海外顧客向けのサービス対応について、導入費用やリソースなどが気になり、ためらう人もいるのではないだろうか。2021年6月9日に開始された「ECzine Day 2021 Summer」に登壇したWovn Technologies株式会社 Marketing Departmentの秦藍子氏は、そうした状況について「世界の97%の市場を捨てている状態」と警鐘を鳴らす。「グローバルECサイトコスト削減の裏技とは?~海外売上比率を向上させたお客様事例もご紹介~」と題し、コストメリットや運用面での負担軽減方法などを紹介したセッションの様子をレポートする。

ニーズが高まる多言語対応 越境EC構築で解決すべき3つの課題

Wovn Technologies株式会社 Marketing Department 秦藍子氏
Wovn Technologies株式会社 Marketing Department 秦藍子氏

 2014年3月に設立し、Webサイト・アプリ多言語化ソリューション「WOVN.io Suite」を展開するWovn Technologies株式会社。「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げ、異なる言語へのアクセスを容易に実現することで情報格差の解消に取り組んできた。

 主軸サービスとなる「WOVN.io」「WOVN.app」は、Webサイト・アプリを最大43言語、76のロケール(言語と地域の組み合わせ)で多言語化し、母国語による「新たな顧客体験」を創出するソリューションだ。これらを用いて元言語のWebサイト・アプリをひとつ作るだけで、自動的に多言語展開し、翻訳の修正も同一プラットフォーム上で行うことができる。これまでに翻訳したページ数は800万に上り、導入サイト数は1万8,000以上、年間アップデートも250回と頻繁に行われており、常に最新のサービスが提供されている。

 また、多言語化APIソリューション「WOVN.api」では、HTML化されていない情報の多言語対応も実現。メールやクラウド、チャットボット、サイト内検索連携、DB連携なども容易に実現する。

 近年、在留外国人向けの交通機関や生活インフラなどの情報サービス、製造業の海外展開はもちろん、製品マニュアルや外国人従業員向けイントラネットなどのコミュニケーションツール、越境ECなど、さまざまな事業者・組織で多言語コンテンツの活用は急速に広がっている。しかし、課題が多いのも実情だ。ここで秦氏は、越境ECを例に挙げながら3つの課題を紹介した。

1. 自社構築における高いハードル

 越境ECでは、言語、法律、決済、配送などさまざまな面でコストやリソースなど意識すべきポイントが多数存在する。具体的には次のとおりだ。

  • 言語:翻訳を行うことに加え、翻訳した内容でWebサイトを構築する必要がある。機械翻訳を活用する場合は、誤訳のチェック、更新・運用時の調整なども欠かせない
  • 法律:EUのGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)など、国・地域ごとに異なる個人情報の取り扱いには注意が必要だ。抵触すると莫大な制裁金がかかる可能性がある
  • 決済:中国ではAlipayやWeChat Payなどの二次元コード決済、アメリカではオンライン決済サービスPaypal、台湾はコンビニ振込が主流といったように、国ごとに好まれる方法が異なる
  • 配送:国内配送よりも時間やコストがかかるだけでなく、国によって通関にかかる日数が異なるため、事前に顧客への明示を行う必要がある

2. 自社構築における集客の難しさ

 モールであれば出店初期からある程度のアクセスを見込めるが、自社構築の場合は海外SEOやSNS広告などを組み合わせて独自に集客する必要がある。決済と同様、国によって集客、海外SEO、SNS広告などの事情は異なるため、注意しなくてはならない。

 たとえば、検索エンジンのシェアは中国では百度(バイドゥ)、ロシアではYandexが1位となっている。SNSシェア1位については、中国ではWechat、香港ではFacebook、韓国ではKakao Talkといったように国ごとにさまざまだ。また、チャネルだけでなく、色やデザインなども好まれるものが異なる。

国ごとに異なる検索エンジン・SNS事情

3. モール出店における情報資産化

 各国でメジャーなECモールに出店することも選択肢のひとつだが、そこには「顧客情報の資産化」という課題が存在する。購買データや会員情報など出店者が取得できる情報には限りがあるため、顧客情報の分析・活用が困難になってしまう。

顧客情報の資産化が難しい海外モール出店

購買プロセスの「認知」に作用する多言語化 テクノロジー活用が鍵に

 前出した課題を解決し、スムーズに多言語・越境販売に対応したECサイトを構築するにはどうしたらいいのか。秦氏は「テクノロジーの活用が鍵になる」と語る。

 テクノロジーの進化により、自社が抱える課題をピンポイントに解決できるソリューションが多く登場している近年。従来は決済や翻訳、サイト分析などの基本的な機能がすべて盛り込まれた横断・標準型のサービスが越境EC対応時の主な選択肢となっていたが、現在はカート、購入代行、マーケティング、物流、カスタマーサポート、翻訳など専門領域に特化した高機能なサービスが多数存在している。また、それぞれの連携がスムーズになっている点もポイントだ。

 とりわけ越境ECに欠かせないのは、Wovn Technologiesの領域でもある「翻訳」だ。秦氏は「言葉は購買プロセスの上部、すなわち認知に作用する部分だからこそ重要」と説明した上でこのように続ける。

「良い商品を用意し、良いサイトを作成して、どんなに決済・配送などを整えても、『認知』を高めない限り顧客は入って来ません。入り口となるWebサイトの多言語化を進め、まず見てもらうことが大切です」(秦氏)

認知を高めなくては顧客は入ってこない

 多くの人が母国語で情報を入手したいと考えていることは数字でも明らかになっている。EUの調査機関「Eurobarometer」が行ったアンケート結果によると、インターネットユーザーの19%は「Webサイトを外国語で閲覧したことがない」と答え、10人中9人は「選択肢が与えられた際はいつでも母国語でWebサイトを訪問」、42%は「Webサイトでは母国語以外で商品購入をしたことがない」と回答していると言う。

「EUは、世界でもっとも多様な民族や言語、宗教が存在する地域のひとつです。EU以外の国や地域では、さらに母国語以外のWebサイトからものを購入することに抵抗があるはずです。越境ECにとって多言語化は非常に重要な要素のひとつと言えます」(秦氏)

 しかしながら、多言語化には複数の課題が存在する。まず挙げられるのは、初期開発のコストや手間の問題だ。ECサイトはとくに、商品ページやマイページ、カート、決済、動的コンテンツ、SNS、サイト内検索など、さまざまなページ・機能が搭載されている。多言語化を行う際も単なる翻訳のみならず、カルチャライズ、デザインやレイアウトの変換、システム要件の領域でも変更が必要となり、当然ながら言語が増えればこれらも増えていく。実際に制作会社に見積もり依頼したケースでは、3言語対応で初期費用が1,000万円以上と提示されたケースもあったと言う。

 また、開発だけでなく、運用においても注意すべきポイントは多い。外国人戦略・海外SEOなどの「戦略領域」、外国人に受け入れられるコンテンツやコピーライティングなどの「クリエイティブ領域」、クリエイティブデザインや法規制・商習慣に適応した「現地法・法令遵守」といった項目が存在するが、秦氏は「ECサイトは更新性が高く、従来の方法では多くのリソースとコストが必要」と語る。

 そして、何より大きいのが人材の問題だ。多くの専門人材を必要とする多言語サイト構築をすべて自社で対応するのは、ハードルが非常に高い。翻訳するだけでなく、Webサイトとして形にするためのエンジニアや案件を束ねるプロジェクトマネージャーも必要となる。

多言語サイト構築の人材問題

多言語化で注意したい3つのポイント コスト削減も実現するWOVN.io

 前出したように多言語化においてはさまざまな課題が存在するが、秦氏はフロント構築面でとくに注意すべき3つのポイントを次のように解説した。

1. 大きな誤訳がないか

 機械翻訳は固有名詞に誤訳が生じるケースが多く、利用時には注意が必要となる。とくに商品・サービス名が誤訳されてしまうと、購買のチャンスを逃すだけでなく、ブランドイメージを損ねることもあるため、見逃してはならないポイントだ。

2. UI/UXが崩れていないか

 同じ単語でも言語によって文字数は変わる。これにより、レイアウトが崩れる点にも注意しなくてはならない。たとえば、日本語から英語に翻訳した場合、文字数やテキストの長さが2倍以上になるケースも存在する。同一テンプレートを用いた際に、ほかのテキストリンクと重なり、クリックできないといったことが起きてしまうとWebサイト自体の信頼性にもかかわるため、UI/UXに気を配ることも欠かせない。

UI/UXが崩れていないか

3. リアルタイムな情報発信ができているか

 日本語の場合、ブログやSNSを用いたリアルタイムな情報発信を活発に行うことができるが、多言語に対応する場合、翻訳に時間がかかり更新性が下がってしまうケースも往々にして存在する。その結果、重要な情報や新着情報の掲載が不足しては、顧客体験向上も困難になってしまう。

 Wovn Technologiesは、こうした課題を解決しながら多言語サイト構築を実現すべく、「特許を取得した独占的な技術」「1万8,000件以上の導入事例によるノウハウの蓄積」「20億以上の翻訳データの蓄積・活用」「API連携などの拡張性の強み・競争優位性」を有した事業展開・サービス提供を行っている。

「当社が提供するWOVN.ioは、単なる機械翻訳ツールではありません。ツールとしてお渡しして終わりではなく、お客様とプロジェクトを設計し、専任チームによって導入から翻訳品質向上、運用までをソリューションとして包括的に推進・提供しています」(秦氏)

WOVN.ioのコンセプト

 WOVN.io導入において、とりわけ効果が高いのは、多言語対応のコスト削減だと言う。WOVN.ioでは言語ごとの開発を行うことなく、ひとつのプラットフォームで対応できるため、開発費用や人的リソースを大幅に削減することが可能だ。たとえば、従来は数ヵ月から数年の期間、数百万円から数千万円のコストをかけて行っていた多言語対応を、WOVN.ioを活用することで数日から3ヵ月程度で、かつシステム開発費不要の定額運用にて実現できる。Webサイトの作りによっては、HTMLのスクリプトを1行入れるだけで多言語化が完了するケースも存在するほどだ。

 そのほかにも、読み込み遅延を最小に抑え、世界中どこへでも同一レベルの高品質なコンテンツを届けることができるCDNや、特許技術を用いた高速翻訳処理、資産化した翻訳情報を基に別サイトやアプリ、メールなど他チャネルに自動反映する機能を取り揃えている。エンタープレイズレベルのセキュリティ担保やGDPRなどに対応するためのCookie非取得設定、さまざまな管理者権限設定も可能。海外SEOに対応している点もポイントと言えるが、同プラットフォームのいちばんの強みは「翻訳精度をコントロールできること」だと秦氏は強調する。

 WOVN.ioでは多彩なテクノロジーによる翻訳手法が存在するが、機械翻訳を用いる場合も搭載された辞書機能に商品名などを登録すれば、翻訳や間違いの自動修正をスムーズに行うことができる。プラットフォーム内からクラウドソーシングで複数名に安価でスピーディーな人力翻訳や、社内に在籍する専門性の高い翻訳者による対応も可能となっている。

「重要なのは、コンテンツによって翻訳の運用に緩急をつけることです。クオリティを担保しつつ、スピーディーな情報を展開できるよう、当社はさまざまな手段をご用意しています」(秦氏)

WOVN.ioで用意するさまざまな翻訳手法

聖林公司・アニウェア・トゥモローランド WOVN.ioで成果を上げる3社を紹介

 ここで同社のソリューションを活用し、多言語化を実現する3社の事例が秦氏より紹介された。まずは、アパレルブランド「HOLLYWOOD RANCH MARKET(ハリウッドランチマーケット)」などを展開する聖林公司だ。

聖林公司の事例

 外国人の購入比率が60%以上を占める実店舗も存在するなど、世界的な人気を誇る同ブランドは、海外でのさらなるブランド認知および新規販路開拓を目的に、欧米・香港に向けて越境ECを推進。企業やブランド商品に関する情報を発信し、理解してもらうことを目的に多言語化に取り組んだ。

 アパレル独特の言い回しや表現が多用されていたため、機械翻訳だけでなく人力翻訳も活用。人の目でチェックしながら表現を最適化した結果、海外からのWebサイト流入率が2%から5%に上昇し、海外EC売上比率も5倍に成長したと言う。

 ふたつめの事例は、アニメやコミック・ゲームとコラボしたファッションアイテムを企画・販売するアニウェアだ。日本人のファン向けに商品販売を行っていたが、外国人からの問い合わせが次第に増え、コールセンターのコスト増大が課題になったことを機に、Google翻訳を用いた自力での多言語化に着手したものの頓挫。そこでWovn Technologiesに依頼し、作品のタイトルやキャラクター名、アイテムや必殺技など翻訳が難しい内容も多言語化を実現。外国人や海外ユーザーの期待を裏切らないWebサイトと、迅速に商品提供ができるインフラ整備を行った結果、海外ユーザーが4倍に増加している。

アニウェアの事例

 最後に紹介したのは、トゥモローランドの事例だ。ファッションブランドとして多くの店舗を展開する同社は、インバウンドで外国人の利用が急増。とくにECでの海外リピーター増加率が日本語サイトの4倍以上を記録し、「売上の約2%を占めるようになったことから多言語化に取り組んだ」と秦氏は説明する。

トゥモローランドの事例

 同社はスピーディーなサイト構築を目指し、決済については代理購入サービスを利用。WOVN.ioを活用し、3ヵ月で3言語対応を実現したところ、海外リピーター率が英語で30%、簡体字で40%増加した。秦氏は「効率的に運用の自動化を実現できた事例」と補足した上でこのように語り、セッションを締めくくった。

「越境ECの自社構築にはさまざまな高いハードルがありますが、比較的容易に始めることができるECモールもまた、さまざまな課題が存在します。自社ECの多言語化には膨大なリソース・コストがかかると思われる方も、進化するテクノロジーを活用すれば課題の解決は可能です。ぜひ賢くご活用いただければと思います」(秦氏)

 Webサイト・アプリの多言語化に興味がある/課題を感じている方へ

 Wovn Technologiesは、Webサイト・アプリを最大43言語・76のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化し、海外戦略・在留外国人対応を成功に導く多言語化ソリューション「WOVN.io」および「WOVN.app」の開発・運営をしています。本記事で興味を持たれた方はぜひお気軽にご相談ください。詳細はこちら

 また、セミナーも毎月開催しておりますのでご参加ください。詳細はこちら

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/9310 2021/07/15 11:00

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