購買目的のSNS活用増 ひとつの入口として万全な対策を
次に小林氏が紹介したのは、「ソーシャルショッピングへの準備」について。今やSNSはマーケティングに不可欠な存在だが、その用途はブランド認知からファン化、ひいては購入へと移りつつあると言う。すでに日本国内でも、およそ1割のユーザーがInstagramやFacebookを購買目的で利用しているのが現状だ。
「皆さん自身の行動を振り返っても、『おいしいものを食べたい』といった欲求を満たす際に写真などの視覚から情報に入り、購入につながることが増えているのではないでしょうか。美しい写真がタグで整理されているSNSは、購買につなげやすいツールのひとつとなり得ます」(小林氏)
47%のユーザーが購買目的で利用するPinterestは、とくに海外への訴求力が高いツールとして注目を集めている。グローバルに向けたアプローチを目論む国内事業者は、マーケティングやプロモーションの手段として視野に入れると良いだろう。小林氏は「購買のひとつの入口としてSNSをとらえるのは自然の流れ」と語った上で、「プラットフォーム、SNSともに購買機能を強化している」と現状を分析した。
ダイナミックプライシングはグローバルECから 多言語対応も欠かさずに
6つめに小林氏は「ダイナミックプライシングの採用」について言及。シーズナリティに応じて価格変更を行う同取り組みは、旅行業界ではすでに馴染み深いものとなっているが、他業界で取り入れている企業は日本ではまだ数少ない。海外ではすでにさまざまなソリューションが提供され、APIやCMSで容易に連携することが可能となっている。小林氏は「国内市場で行うことにためらっているのであれば、グローバル販売からダイナミックプライシングにチャレンジしてみてはどうか」と勧める。実際に同社が担当するグローバルECの案件では、配送や仕入価格、人件費の変動を踏まえたダイナミックプライシングがすでに複数行われていると言う。
「現在の価格にこだわらず、さまざまな金額で展開を行い売上を見ることは、市場価値を再認識するという意味でも効果的と言えます」(小林氏)
グローバルECで意識すべき項目の最後に小林氏が紹介したのは、「対応言語の増加」だ。Webサイト上対応言語は年々増加しており、日立製作所、トヨタ自動車、キヤノンといった日本企業を含む世界の主要150サイトで、平均33言語に対応していると言う。たとえば、Airbnbは2018年から2019年にかけて対応言語を31から62に増やしたほか、Mastercardでは34言語から43言語にまで拡大している。
こうした背景には、顧客の多くが持つ「母国語で情報を入手したい」というニーズに応えるためといった理由が見え隠れする。全世界のインターネットユーザーのうち、日本語を使うユーザーの割合はわずか3%。日本語のみで情報発信を行っている場合は、市場の97%に未到達と言え、小林氏は「非常に損をしている」と述べる。市場の拡大を狙うならば、対応言語の拡大は必須だ。また、インターネットユーザーの利用言語割合を見ると、英語ユーザーは25%にとどまるほか、非英語7言語で46%をも占めているという結果も出ている。2030年までには、非英語人口がさらに20億人増えると予測されており、小林氏は「市場の拡大および利益向上を目的として、ぜひECでも多言語化にチャレンジしてみてほしい」と訴えた。
小林氏は最後に、今後グローバルECに取り組む企業に向け、このようなエールを送りセッションを締めくくった。
「コロナ禍で、新たな価値創造が求められる時代になりました。デジタルシフトがさらに進み、サービスの国際化が加速する中で、トレンドを踏まえたさまざまな観点から価値構築を行う必要があると言えます。国内市場のみならず、海外に向けた対応の必要性も高まっていることを踏まえ、遅れないように危機回避に取り組んでいただきたいです。そのためにも、ぜひ海外の最新情報や先進企業の事例を参考にしてみてください」(小林氏)
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