生活環境のすべてを顧客接点に アンカー・ジャパンの目指す先は?
金子(ヤプリ) アプリはオンオフをつなぐハブにもなりますし、密な交流の場としても活用できます。Anker Japan 公式アプリでは、メインメニューに「チャット」を設けているのが特徴的だなと思いました。これはサポートを重視する姿勢の表れでしょうか。
芝原(アンカー・ジャパン) 当社は、単に高機能な製品を手に取りやすい価格で提供するだけでなく、購入後の体験も重視しています。カスタマーサポートもその一環で、手軽に問い合わせしやすい環境を提供するためにアプリ内のメニューに意図的に組み込みました。伝わっていてうれしいです。
ガジェットは、好きで詳しい方もいる反面、初めて手に取って「使い方がわからない」「思い通りに動かないけど故障かな?」と不安を覚える方も多くいる商材だと思います。多くのお客様にとって、最も身近なガジェットであるスマートフォンのアプリから手軽に問い合わせができる環境を用意して、「不安がすぐに解決できた」「対応が良かったから、またここから買いたい」と思っていただけたら、安心感につながるのではないかと考えています。
金子(ヤプリ) アプリで安心感と密着度を高めていらっしゃるということですね。
芝原(アンカー・ジャパン) ちなみに、購入後のアンケートもアプリ経由で実施しています。私たちは「声を挙げてくれたお客様の後ろには、99人同じことを思っている人がいるはず」と考えて製品・サービス双方の改善に取り組んでいます。
金子(ヤプリ) ちなみに、アンカー・ジャパンさんは2025年5月に新業態「Anker Store & Cafe 汐留」をオープンされたり、飲食店や宿泊施設と手を組んで顧客接点を拡大されたりと、おもしろい取り組みも多数行っていらっしゃいます。こうした施策は、ロードマップを描いて行われているものなのでしょうか?
芝原(アンカー・ジャパン) 店舗数や売上高など、中長期の計画はもちろん掲げていますが、すべてをロードマップで描いた通りに進めるというよりは、お客様のニーズやトレンドなどに応じて柔軟に対応をしていく方針です。数年前までは、カフェをオープンするなんて夢にも思っていなかったです。
ガジェット業界やD2Cの世界は予想よりも進化のスピードが速く、綿密な計画を立てても前提条件自体が変わりがちです。そのため、柔軟性をもってアジャイルな改善をしていくことを意識しています。
金子(ヤプリ) アプリやEC運営も、ほぼ内製化されていますよね。
芝原(アンカー・ジャパン) はい。外的環境の変化に素早く対応できる動きやすさを踏まえて、基本的に内製で取り組んでいます。カフェも自社運営です。
金子(ヤプリ) それは驚きました。
芝原(アンカー・ジャパン) メーカーなので、より良い製品を作るための改善は大前提として、今は事業開発にも力を入れています。デバイス側の進化が著しいので、充電が必要なシチュエーションはありとあらゆる場所に広がっています。「充電したいな」と思った瞬間に目の前にAnker製品がある環境を作れば、すぐに購買には至らなくてもフリークエンシーが高まり、購入時の検討テーブルに乗せていただけるはずです。生活の一部にAnkerグループ製品がある体験を作っていけたらと考えています。
金子(ヤプリ) 良い製品を作って、手厚いサポートを提供する。当たり前のことですが、目の前の売上に追われすぎて見失ってしまう方も少なくありません。この基本に誠実に向き合っていることがアンカー・ジャパンさんの強みだと、今回お話を聞いて改めて感じました。ありがとうございました。
対談を終えて(ヤプリ 金子氏より)
記念すべき連載第1回目は、私も日頃より愛用させていただいているアンカー・ジャパンの芝原さんにお話を聞きました。
同社の手掛ける製品は、モバイルバッテリーやオーディオ、プロジェクターと顧客に身近なライフスタイルブランドです。ブランドと顧客の接点として公式アプリを展開し、そのメインメニューの中で「チャット」という、顧客がいつでも相談できる顧客接点を作る企業としてのスタンスを感じることができました。Amazonから販売を開始し、公式EC、直営店の拡大、カフェ業態と進化をし続けるアンカー・ジャパンにこれからも注目です。

