新たな商流を作るからこそ意識した“縦割りにならないチーム体制”
大企業が新規ビジネス創出に取り組む際、既存の部門・部署の縦割りをどう越えて手を組むかも、成功を大きく左右する要素となる。新たな商流を生み出した「ファミマオンライン」も例外ではなく、「関係者が一体となり、ステアリングコミッティ(運営委員会方式)で議論してサービスの形を作っていった」と語る近藤氏。
「『ファミマオンライン』という新たな商流は、私たちが所属するデジタル事業本部、システム本部だけでは成り立ちません。扱う商品の選定・開発には商品本部が、店舗のオペレーション整備にはオペレーション本部が、商品の配送には物流本部が、開設時や新商品の発売、キャンペーンのお知らせや商品の認知促進、告知などにはマーケティング本部が、といったように、あらゆる部門が関係しています。
プロジェクト推進時には各部門から担当者を任命し、兼務として携わってもらうことで、密な連携を取りやすくしました。きちんと“一つのチーム”として動けたことが、2025年3月のオープンにもつながっていると思います」(近藤氏)
ファミマオンラインが防ぐ店頭の“とある機会損失”
部門の垣根を越えた連携が功を奏した仕組みの一つに、季節商品・限定の事前決済がある。たとえば、おせちやクリスマスケーキ、恵方巻など、事前予約が必要な商品でも、従来は受取時に代金と引き換えるケースが一般的で、無断キャンセルによる機会損失が課題となっていた。「ファミマオンライン」が窓口になったことで、こうした予約も「ファミペイ」、クレジットカード、店頭前払いで事前に決済するようになったという。
「会計観点を踏まえて、ファミマオンラインでは事前決済に対応しました。既存の会計スキームや店舗会計システムに大きく影響のない形でこの仕組みを実現できたのも、ヘッドレスコマースの柔軟性のおかげです」(田口氏)

こうした事前決済をともなう新たな取り組みも、サービス開発担当とシステム担当だけで推進すると、机上の空論になりかねない。店舗の存在や加盟店の協力あってのビジネスであると強く実感しているからこそ、プロジェクトの初期から各所の意見を仰いできた様子がうかがえる。
「関係各所が一体となってプロジェクトを推進できたことで、短期間での立ち上げが実現できました。ヘッドレスコマースを選んだからこそ、費用対効果の良い形で進められましたし、制約に縛られずに動かせている企画もあります。『ファミマオンライン』の今後の展開も、楽しみにしていただきたいです」(近藤氏)