Amazonメディア化の実態
酒井氏は、Amazonの直近1〜2年の動きにおいて、最も大きなトピックは「メディア化」の加速だと解説。これまで広告枠が存在しなかったAmazonプライムビデオに対し、新たに広告枠の提供が開始された(2025年11月時点では、一部代理店の専売)。これはAmazonを単なるオンラインストアとしてだけでなく、メディアとして活用してもらおうというプラットフォーム側の強い意志の表れである。
このメディア化に伴い、FireTV、Twitch、あるいはAmazon DSPを通じた外部メディア(TVer、ABEMAなど)への配信において、Amazonが保有する膨大な購買シグナルを活用したリーチが可能となっている。最大の特徴は、Amazon内で得られるシグナルをもとに配信を最適化できる点にある。
これにより、「Amazonをメディアとして使うことで、Amazon内の売上だけでなく、実店舗の売上にもつながる施策ができるようになっている」という。プライムビデオ広告は現状、扱える代理店が限られているが、今後の展開を含め、EC担当者は注視すべき領域である。
AMCの活用が売上拡大のカギ
Amazonの広告活用において、計測・分析環境の整備として登場したのが「Amazon Marketing Cloud(AMC)」である。AMCとは、Amazonの広告配信のシグナルや自社のデータなどを安全なクラウド環境で統合・分析できる仕組みのことだ。これまでスポンサー広告とAmazon DSPはそれぞれの管理画面でしか成果を確認できなかったが、酒井氏によると「AMCの登場によって、複数プロダクトを横断したファネル分析ができるようになった点が革新的」だという。
具体的には、アッパーファネル向けの認知施策(FireTVでの動画広告など)を実施した際、それがどれだけスポンサー広告の検索や購入に寄与したかというアトリビューション(貢献度)分析が可能になった。
また、商品ごとの新規獲得数の分析も詳細に行えるため、「新規顧客を獲得するならこの商品が入り口として最適だ」といった判断もシグナルに基づいて行えるようになる。ユーザーの行動フローが可視化されることで、2回目に購入されやすい商品を特定し、商品ページ内の比較広告やリマーケティングに活かすといった施策も可能だ。
