ファミリーマートが「ヘッドレスコマースしかない」と考えた3つの視点とは
ファミマオンラインは、ファミリーマートがこれまで展開してきた「ファミペイWEB予約」やギフトサービスを統合して誕生した、新たなオンライン接点だ。店舗サービスと組み合わせ、オンラインコンビニとしての機能を果たすことで、ファミリーマートらしい買い物体験の提供を実現している。
2025年3月に運営開始した同サイトだが、起源は2021年にまでさかのぼる。2019年に誕生したアプリ「ファミペイ」や、2021年9月にサービス開始したデジタルサイネージ「FamilyMartVision」といったデジタル接点強化をさらに加速させるべく、「デジタルコマースプロジェクト」が発足。「約2年かけてeコマースに関する様々なトライアルを重ね、ローンチに向けて本格的に始動したのは、2023年3月頃だった」と近藤氏は振り返る。

構想からローンチまでは2年ほど。店頭オペレーションの整備や周知をともなう案件であることを踏まえると、決して長い準備期間とはいえないだろう。それでもスピード感をもちつつ、万全を期した環境作りができた背景には、ヘッドレスコマースを実現する基盤と部門横断型のプロジェクト推進体制があったという。
「私たちは、『ファミマオンライン』の立ち上げにあたり、システムとサービスの一体化と、変化するデジタルビジネスのトレンドに適応できる環境構築を意識しました。
『ファミマオンライン』では、食品から衣料品まで多種多様な商材を扱っています。たとえば、コンビニエンスウェアであれば、スタイリッシュな商品詳細ページを作成したいという要望が出るかもしれませんし、今後新たな商材が増える可能性もおおいにあります。それらすべてに対応できる環境を作ろうとした際に、ヘッドレスコマースの概念を取り入れるのは必然でした」(田口氏)
自由にフロントエンドをカスタマイズできる仕組みはさることながら、ファミリーマートがフロントエンドとバックエンドを分離できるヘッドレスコマースに着目した理由は他にも存在する。それは、ビジネスの根幹の仕組みとして運用されている商品物流・店舗・会計などの基幹システムに大きく手を加えずとも、新たなビジネス構造を取り入れられる点だ。
「バックエンド連携の容易さと関連しますが、POSシステムなど、加盟店の皆様の負担ができるだけ増えないようにしながら、新たな販売方法とチャネルを増やせる点もヘッドレスコマースの大きな利点でした。トレンドに乗ったわけではなく、フロントエンド、バックエンド、既存オペレーションの3点セットで考えた際に最も適切だったのがヘッドレスコマースだったのです」(田口氏)