デジタル化の過渡期に育ったZ世代 好むECサイトの特徴は
──「誰が決めたの?」と考える点に、Z世代へのアプローチの難しさを感じますね。
小々馬教授 Y世代以前は、所有物でアイデンティティを表現する人が少なくありませんでした。人々が同じように成長し、豊かになってきた時代だったため、ブランドなど所有物で違いを見せたかったからです。
しかし、Z世代にそのような感覚は希薄です。所有や所属するブランドで他者との違いを表現する習慣がないため、個性的な商品による差別化はあまり効果的といえません。個性的であろうがなかろうが、彼らが重要視するのは「自分に合っているかどうか」です。
Z世代の多くは、自分らしさを表現することにあまり自信がないように思えます。小学校の頃から「みんな違ってみんな良い」と、自分らしさや多様性について教えられてきた一方で、受験や就活の際に“強み”や“個性”を聞かれると、「他人と違っていなければならないの?」と居心地の悪さ、圧を感じるようです。
──成人している人も多いZ世代は、α世代と比べると自分に使えるお金が多いと思います。その中で、どのように買い物をしているのでしょうか。
小々馬教授 Z世代は買い物に対して慎重です。衝動買いが少なく、良いと思っても時間をかけて情報を集め、「購入後に失敗や後悔しない」と納得しなければ買いません。出会って購入するまでのリードタイムが長いのが特徴といえます。
SNSの普及やデジタル化の過渡期に育ってきたZ世代は、オンライン上での失敗を何度も見聞きしています。だからこそ、広告で見られる「あなたにおすすめ!」といったキャッチコピーをすぐには信用しないのです。
たとえば洋服やコスメを購入する場合は、自分の体型や肌の色によく似たインフルエンサーをSNS上で探し出し、投稿内容を参考にして買い物をする人が多いようです。一昔前のような、タレントの影響を受けて“あこがれ消費をする感覚”は非常に弱いですね。
一方で、Z世代には、買い物を“ときめくイベント ”として楽しみたい気持ちもあります。その意味では、ECサイトが普及していても実店舗での買い物を好む人が少なくないでしょう。
特に大学生が頻繁に購入する洋服やコスメは、サイズや色合い、似合うかどうかといった面で、失敗も多いカテゴリーです。そのため、はじめて購入する際は実店舗で、使用してみて安心できればお得なECサイトで、という流れが生まれやすいです。
──慎重さや実店舗での買い物を楽しむ側面をもつZ世代には、どのようなECサイトが好まれると思いますか。
小々馬教授 公式サイトと第三者の意見、どちらも参考にできる仕掛けが必要です。Z世代は、今までにSNS上の情報に惑わされて後悔した経験があります。その分、偏った情報の取得を避けるため、企業やブランドが発信する公式の情報だけでは心配になり、客観的な意見としてほかのユーザーの声(UGC)も知りたいと考えます。良いメッセージだけが並ぶ情報源は信用できないからです。こうした点から、ポジティブ・ネガティブどちらの声も掲載しているほうが、むしろZ世代には好まれると思います。