Shopifyの最高収益責任者が考える“ビジネスの方程式”とは
7日の基調講演に登壇したOracle NetSuite創業者のエバン・ゴールドバーグ氏。統合された社内データに基づいて、質問者に合った回答をするAIエージェント「Ask Oracle」を備えた「NetSuite Next」を発表した。
また、同日午後の講演には、Oracle NetSuite Growth Strategy and Execution, SVP サム・レヴィ氏が登壇。「ただ生き残るだけの企業と、本当にスケールする企業の違いを探る」と述べ、事業拡大に成功したNetsuiteユーザーへのインタビューを実施した。

最初の事例として登場したのは、Shopify CROのボビー・モリソン氏だ(現地時間2025年10月9日で同氏は退任)。CEOのトビアス・リュトケ(Tobias Lütke)氏が、自宅の地下室でスノーボード用品店を立ち上げたのが始まりであるShopify。今や175ヵ国以上にサービスを展開するまでに成長した。これまでを振り返り、モリソン氏は「今日に至るまで長い道のりだった」と語った。
「起業家への支援が、我々のDNAに刻まれているのです。ユーザーの事業が成長するにつれて、Shopifyの能力も拡大しなければなりません。新しい機能を追加する必要もある。コアプラットフォームの強化には、時間を費やしてきました。今では、スタートアップに限らず、世界的に著名なブランドもShopifyを採用するようになっています」(モリソン氏)

そんな“ハイパーグロースモード”ともいえるShopifyを支えるのが、AIクラウドERPのNetsuiteだ。同社では、既に10年以上Netsuiteを活用している。「以前は年間800ドルかかるシステムを利用していたが、それではIPOが難しいことは明確だった」とモリソン氏。監査の側面からも、ShopifyはNetsuiteへの移行を決めた。それにより、M&Aによる新市場への展開も加速したという。
こうして着実に世界へその輪を拡げているShopifyだが、モリソン氏は「事業を拡大する上でシステムが障害になってはならない」と強調する。
「私は『(価格×販売数÷摩擦)×AIの力によるリーダーシップ』を、ビジネスの方程式だと考えています。多くの企業が、価格や販売数といった前半部分に時間を費やす傾向があります。しかし、売上がどれだけ上がっても、摩擦が成長を鈍化させることに目を向けられていません。それを取り除く上で、Netsuiteが重要な柱の一つとなっています」(モリソン氏)
AI活用の第一歩「好奇心を持って楽しんでほしい」
ビジネスの方程式の一要素として「AIの力によるリーダーシップ」を挙げる。このことからも、ShopifyがAI活用に積極的だとわかるだろう。Netsuite Nextに多くのAI機能が追加されたこともあり、本講演ではレヴィ氏からAI活用に関する質問もモリソン氏へ投げかけられた。
実際、Shopify社内でのAI活用に関する情報共有は活発に行われている。Slackに情報共有用のチャンネルが存在し、従業員は業務以外のAI活用で得た発見も気軽にやり取りできる体制だ。また、エンジニア以上に事業部門がAIを業務に取り入れているという。モリソン氏は「AI活用は、好奇心を持って始めることが重要。まずは実際に触って楽しんでみてほしい」とアドバイスを送った。