昨年同期比で売上3倍に 商品開発・物流の課題をどう乗り越えた?
うどんやお好み焼などの冷凍食品で知られるテーブルマーク。2023年1月に、D2Cブランド「BEYOND FREE」をスタートした。
ブランドの原点は 「食べたいのに食べられない、をなくす」だ。体質や健康への配慮のため食事に制約がある人へ向けて、植物由来の原材料で食物アレルギーに配慮した商品、カロリーなどをカットした商品を展開。自社ECサイトには、小麦・乳製品・卵を使用していないロールケーキやグルテンフリーの玄米ブレッド、動物性原材料不使用のチャーハン、ラーメンなどが並んでいる。
「新ブランドの立ち上げにあたっては、様々な商品や手段を検討しました。その中でも、今までのノウハウを活用しながら新たな領域に挑戦できる、既存事業と明確に異なるポジションを確立できると判断したのが、植物由来の商品でした」(武田氏)

BEYOND FREEは、現時点でオンラインチャネルを軸としている。オフラインでの販路もあるが、ブランド独自のメッセージを必要な人に届けるために、武田氏らはEC販売を選択した。
「当初は、お付き合いのある卸・小売企業様から『商品を取り扱いたい』との声が上がったこともありました。しかし、既存ブランドとの差別化が難しくなります。また、実際のお客様のニーズも未知数だったため、あえてEC一本に絞ったのです」(武田氏)
現在、BEYOND FREEは順調に事業規模を拡大している。寺窪氏は「2024年の同期比で、売上は3倍ほどに拡大した」と明かす。自社ECサイトの会員数やLINEアカウントの連携数も増加中だ。
「主要ユーザーは40代以上の女性です。リピート率が高いのが特徴で、ブランドや商品自体を気に入ってくれている方が多いのだと、ポジティブに捉えています」(寺窪氏)
BEYOND FREEは元々、ヴィーガンやアレルギーを持つ人を意識したブランドだが、「もっと気軽に植物由来の食品を手に取ってほしい」との想いから、食材にこだわる人や健康意識が高い人にまでターゲットを広げた。武田氏は「植物由来というと『健康には良くても美味しくない』と思われがち。イメージを覆したい。驚きを届けたい」と強調する。こうした考えから、商品開発には時間をかけた。そのかいあって、実際に購入した顧客からは「植物由来だとは思わなかった」との口コミが寄せられているという。
「素材・原料の選び方、生産場所、アレルギーチェック、リーガルチェックなど、商品開発には今でも苦労しています。視点を変えれば、同じくらい大変な思いをして食べられる商品を探しているお客様が存在しているのです」(武田氏)
ハードルが高かったのは、商品開発だけではない。新ブランドのため需要が予測しづらい上に、物流も同社の従来の流れとは大きく異なる。社内の協力が必須だ。原料の調達段階から物流まで、これまで各部署を渡り歩いてきた武田氏だからこそ、他部署への負担が理解できた。
「商品の試食会を開き、製造や営業をはじめ様々な部署の方に実際に食べてもらうなど、取り組みを知ってもらうための社内PRには非常に力を入れました。新規事業を軌道に乗せるには、他部署との関係値が重要だと実感しましたね」(武田氏)