SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

直近開催のイベントはこちら!

【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

次なる顧客体験へ 大手企業の目線

冷凍うどんのテーブルマークが語るD2C事業の現在地 成長の理由は「伝えすぎない」マーケティング?

 冷凍食品で知られるテーブルマーク株式会社のD2Cブランド「BEYOND FREE」が、事業を拡大している。植物由来の商品を展開する同事業は、なぜEC販売を軸にしたのか。その成功を支える商品開発やマーケティング、BtoB展開など、同事業の現在地とこれからを、戦略本部 BEYOND FREE推進室 室長 武田淳一氏、同室 寺窪正昭氏に聞いた。

昨年同期比で売上3倍に 商品開発・物流の課題をどう乗り越えた?

 うどんやお好み焼などの冷凍食品で知られるテーブルマーク。2023年1月に、D2Cブランド「BEYOND FREE」をスタートした。

 ブランドの原点は 「食べたいのに食べられない、をなくす」だ。体質や健康への配慮のため食事に制約がある人へ向けて、植物由来の原材料で食物アレルギーに配慮した商品、カロリーなどをカットした商品を展開。自社ECサイトには、小麦・乳製品・卵を使用していないロールケーキやグルテンフリーの玄米ブレッド、動物性原材料不使用のチャーハン、ラーメンなどが並んでいる。

「新ブランドの立ち上げにあたっては、様々な商品や手段を検討しました。その中でも、今までのノウハウを活用しながら新たな領域に挑戦できる、既存事業と明確に異なるポジションを確立できると判断したのが、植物由来の商品でした」(武田氏)

テーブルマーク株式会社 戦略本部 BEYOND FREE推進室 室長 武田淳一氏
テーブルマーク株式会社 戦略本部 BEYOND FREE推進室 室長 武田淳一氏

 BEYOND FREEは、現時点でオンラインチャネルを軸としている。オフラインでの販路もあるが、ブランド独自のメッセージを必要な人に届けるために、武田氏らはEC販売を選択した。

「当初は、お付き合いのある卸・小売企業様から『商品を取り扱いたい』との声が上がったこともありました。しかし、既存ブランドとの差別化が難しくなります。また、実際のお客様のニーズも未知数だったため、あえてEC一本に絞ったのです」(武田氏)

 現在、BEYOND FREEは順調に事業規模を拡大している。寺窪氏は「2024年の同期比で、売上は3倍ほどに拡大した」と明かす。自社ECサイトの会員数やLINEアカウントの連携数も増加中だ。

「主要ユーザーは40代以上の女性です。リピート率が高いのが特徴で、ブランドや商品自体を気に入ってくれている方が多いのだと、ポジティブに捉えています」(寺窪氏)

 BEYOND FREEは元々、ヴィーガンやアレルギーを持つ人を意識したブランドだが、「もっと気軽に植物由来の食品を手に取ってほしい」との想いから、食材にこだわる人や健康意識が高い人にまでターゲットを広げた。武田氏は「植物由来というと『健康には良くても美味しくない』と思われがち。イメージを覆したい。驚きを届けたい」と強調する。こうした考えから、商品開発には時間をかけた。そのかいあって、実際に購入した顧客からは「植物由来だとは思わなかった」との口コミが寄せられているという。

「素材・原料の選び方、生産場所、アレルギーチェック、リーガルチェックなど、商品開発には今でも苦労しています。視点を変えれば、同じくらい大変な思いをして食べられる商品を探しているお客様が存在しているのです」(武田氏)

 ハードルが高かったのは、商品開発だけではない。新ブランドのため需要が予測しづらい上に、物流も同社の従来の流れとは大きく異なる。社内の協力が必須だ。原料の調達段階から物流まで、これまで各部署を渡り歩いてきた武田氏だからこそ、他部署への負担が理解できた。

商品の試食会を開き、製造や営業をはじめ様々な部署の方に実際に食べてもらうなど、取り組みを知ってもらうための社内PRには非常に力を入れました。新規事業を軌道に乗せるには、他部署との関係値が重要だと実感しましたね」(武田氏)

次のページ
強みを訴求するほど生まれる顧客との距離 あえて“伝えない”線引きも

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
次なる顧客体験へ 大手企業の目線連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加納由希絵(カノウ ユキエ)

 フリーランスのライター、校正者。地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事をシェア

ECzine(イーシージン)
https://eczine.jp/article/detail/17222 2025/09/08 07:00

Special Contents

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング