若者世代向けのマーケティングは“掘り下げない”ほうが良い?
──そもそもZ世代・α世代とは、どの年齢の人を指すのでしょうか。
小々馬教授 多くの場合、Z世代は1997年〜2009年生まれ、α世代は2010年~2024年生まれの人と定義しています。ちなみに、2025年以降に生まれた人たちはβ世代といわれていますね。
各世代の中でも特性にグラデーションは存在します。たとえば、Z世代の中でもさらに3世代に分けられるのです。
2025年に25~28歳を迎える一番上の世代は“映え”を意識し、SNSで派手な投稿が比較的多く見られます。一番下の世代である高校生たちは、他者に同調しながらもSNSで発信する傾向があるようです。そして、二つの世代に挟まれた20~24歳くらいの人は、そこまで積極的に自分の情報を発信しないとわかっています。
ただし、20~30年前は世代間の差異がもう少しはっきりしていました。それが2010年代以降、SNSの浸透とともに世代間のギャップが小さくなっています。そのため、各世代の差異に目を向けるよりも、変化を辿ることから未来のトレンドが見えてくるはずです。
──教授は企業の継続的な成長にZ世代・α世代へのアプローチが必要だとお考えですが、それはなぜですか。
小々馬教授 これから5年ほどかけて、Z世代・α世代がもつ消費傾向が世界の主流になっていくと考えられるからです。
私は、Z世代・α世代と、それぞれの親へのインタビュー調査を行ってきました。その中で、親たちは自分の子どもから大きく影響を受けるという調査結果が出ています。つまり、Z世代・α世代のニーズに合わせたアプローチ方法は、彼らの親世代にも響く可能性が高いのです。
しかし、ここで注意点があります。実は、Z世代の場合は「Z世代(私たち)向けの商品・サービス」という意図が見えると、拒否感を覚える人も多いです。Z世代の特徴の一つに、疑い深さがあります。仮に企業やブランドが「○○な人におすすめ」のような訴求をしても、Z世代の多くは「誰が決めたの?」と思ってしまうのです。
実際には、Z世代は定番志向が強く「好きなものを大切に長く使いたい」という意識が顕著です。失敗したくない気持ちが理由の一つでしょう。企業やブランドは、トレンドに合わせて商品を開発するよりも、“ド定番”を作るほうが長期的な事業収益を得られて有効だと思います。
流行の足は速く、たとえバズって売れても一時的な人気で終わり、あまり拡がらないケースがほとんど。「若者世代向けのマーケティングは、むしろ掘り下げない方が良い」と私は考えています。
一つポイントを挙げるとすれば、親世代が子ども世代の影響を受けるという特徴から「Z世代+団塊ジュニアのX世代」、「α世代+ミレニアム・Y世代」と家族単位で見るのも良いでしょう。たとえば、性別や年齢を問わず親子で使えるユニバーサルな商品など、新たな市場を捉えられます。