α世代はAIに質問して買い物をする?
──Z世代の多くが成人している一方で、α世代は1番上の年齢でも今年中学3年生です。今後、どのような消費傾向が見られるようになると予測していますか。
小々馬教授 念入りに情報収集するZ世代に対して、おそらくα世代は購入決定まであまり時間をかけないと予測しています。自分の好みを深く理解しているAIをエージェントとして活用し、何が自分に合っているのか提案されたおすすめ商品を最適解として受け入れるのではないでしょうか。
多様な情報に触れるα世代とつながるキーワードは“好き”です。Z世代が自己紹介をする際に「○○を推しています」と自分の推しについて話す人が多いのに比べて、α世代は“好きなこと”で自己紹介します。好きなことは、熱量の違いでマウントをとる不快な状況が起こりづらく、緩やかかつ平和な関係を築けるからです。
α世代は、すぐに“答え”が手に入る場所を探します。なんとなく興味がある人達がゆるやかに集う“界隈”という感覚の場所が、ソーシャルメディアの新しい形となるのではないでしょうか。
これからのオウンドメディア、自社ECサイトには、共感した人が気楽につながるコミュニティのような場所が必要だと考えられます。公式情報を受け取りながらも、ほかのユーザーの声(UGC)で共感や信用性を実感できる場作りが、より強く求められるはずです。
──Z世代、α世代の特徴を踏まえて、これから企業やブランドは何を意識すれば良いのでしょうか。
小々馬教授 Z・α世代の親世代は消費に関する意識が比較的ネガティブで、その影響があるからか、Z・αどちらの世代も「好きなものを長く使うこと」を重視しています。SHIBUYA109の中を歩いている女子高生にインタビューしても「トレンドに惑わされたくない」という意見が挙がるほどです。
以前のような、企業やブランドが「今年のトレンドはこれ!」とリードする関係ではなくなりつつあります。ブランドの想いに対する共感や世界観への「好き」という気持ちが、購買意欲を刺激するのです。今後は「好きなブランドの提案だから、積極的に聞いてみよう」「このブランドを応援して一緒に成長していく過程を楽しみたい」と考える人が、徐々に増えると思います。
また、Z世代やα世代がいわゆる「社会的に正しい倫理観」をもって育っている点も、忘れてはならない特徴の一つです。たとえば、SDGs=尊重しなければならない考え方でなく、前提としてインプットされています。アパレル業界でも、リユースやリサイクルなどSDGsへの取り組みが始まっていますが、これはZ世代やα世代の想いに合っているといえるでしょう。
消費に慎重な世代にモノを売るには、「新しい商品に買い替えよう」という価値訴求が効きません。企業やブランドが主導して、商品が社会を循環する仕組み、共感を呼ぶ生産プロセスで定番商品を開発し、リピートにつなげる事業戦略が好ましいでしょう。