10年で150%成長 自分用購入と相性の良い商材三つを紹介
飯島(博報堂買物研究所) さらに自分用の買物について紐解くために、生活者意識だけでなく、消費者購買パネルも見てみましょう。次に紹介するのは、日用消費財のカテゴリーに絞って「買物全体に占める、EC通販およびEC通販×自分用の買物の金額割合」を可視化した図です。
二人以上世帯の30~59歳男女における、日用消費財の買物金額全体を100としたところ、EC通販での買物は4.85、EC通販×自分用の買物となるとその割合はわずか1.78に留まります。比較的低単価で購入しやすい日用消費財ですが、「自分用の買物をEC通販で行う」という行動を取る消費者は、まだまだ少数派なのが実情です。
一方、EC通販での買物に絞ると、自分用の買物での利用金額は37%を占めています。EC市場をどう拡大していくかという観点で見れば、ここにアプローチして得られるものは非常に大きいといえるでしょう。たとえばドラッグストアで購入できる日用品も、同じ商品を使い続けるのであれば、ECで定期購入したほうが手間がかかりません。こういった需要に応えることで、まだまだ伸ばせる売上があるはずです。
岩崎(QO) 金額ベースの伸び率に目を向けると、100人あたり消費額は2014年に39万8,552円だったのに対し、2023年は56万971円にまで増えています。10年で41%増です。買物点数に着目しても、EC通販での日用消費財買物点数が減っている中で自分用の買物点数は増えているのが、次の図を見るとわかります。
こうした結果からも、まだそこまでインパクトある数字にはなっていませんが、EC通販×自分用の買物の成長率に着目すべきだといえるでしょう。環境整備に目を向けても、ロッカー型の受取スポットが増えるなど、自分だけの買物や家族に見られたくないものをEC通販で買う素地は整いつつありますよね。こうした外的要因も、伸びにつながっていると考えられます。
飯島(博報堂買物研究所) EC通販を使った購買行動を軸に解釈すると、「家族と共用せず、あえて自分のための買物をする生活者は子ありの共働き世帯に多い」というデータも、納得感があります。EC通販は時と場所を選ばず買物ができるので、自分の生活ペースの中で自分用の買物をしやすいチャネルだといえます。
さらに、博報堂買物研究所ではEC通販のうち、特にどのカテゴリーで自分用の買物が伸びているのかも調べてみました。すると、2014年からの10年で伸び率が高いのは「日用雑貨品」「OTC医薬品」「化粧品」で、いずれも150%以上に成長しています。
この結果で意外だったのが、嗜好性が高く、ケース買いやまとめ買いなどEC通販と相性が良いはずの「菓子類」「飲料・酒類」ではあまり伸びが見られなかった点です。恐らく、量が多くスペースを取るものは「家族に見られてしまう」「家の中で場所を取ってしまい、申し訳ない」などといった理由から自分用の買物とは相性が悪く、選ばれにくい結果になっていると考えられます。
岩崎(QO) シャンプーなどの「日用雑貨品」、メイク落としなどの「化粧品」は元々自分用の購入割合が高いカテゴリーです。これらが伸びているということは、ドラッグストアなどリアルチャネルで一度購入し、気に入ったものをEC通販でリピートする行動が定着している可能性もあります。メーカーによる自社EC進出が増えた点なども、こうした数字の変化に関係しているかもしれません。