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コロナ禍後、「ひとり」をキーワードにした買物が主流に
飯島(博報堂買物研究所) 連載第1回「物価高騰の中でも効くアプローチは何か?EC業界苦戦の原因を博報堂買物研究所のデータから読み解く」を担当した、博報堂買物研究所の飯島です。今回は、博報堂買物研究所とQO株式会社が共同で実施した調査や消費者購買パネルの分析を基に、EC視点から「家族消費における、自分のための消費」について一緒に読み解いていければと思います。
岩崎(QO) 私は、QO株式会社でリサーチプランナーとして働いています。ウェブリサーチと消費者購買パネルなど、多種のデータを幅広く分析するなど、市場調査を起点として各企業様のマーケティング活動を手助けしている点が特徴です。
では早速、今回の本題に入っていきましょう。近年、日本では単身世帯の割合が増加しており、かつてないほどに「ひとり」に注目が集まっています。
飯島(博報堂買物研究所) 博報堂生活総合研究所では、2024年に「ひとりマグマ」という名称で「ひとり」に着目した研究発表を行っています。さらに、今回は博報堂買物研究所でも「ひとり」に注目した研究を行いました。
単身世帯の消費については、小売業界を見ても食べきりサイズが増えているなど、対応が進んでいることから、割と理解がしやすい領域かと思います。一方で、家族と同居している人の「“ひとり”の買物」つまり「自分用の買物」動向については、実はまだあまり理解が進んでいません。
岩崎(QO) 家族と同居している人の消費は、個人の嗜好性に注目するというよりも「末子年齢」を基準にこれまで考えられてきました。世帯単位の買物は末子の年齢=ライフステージに引っ張られるという考えに従い、調査結果を読み解くケースは非常に多いです。今までは家族と暮らしていても「あえて自分のために買いたい」といった消費がある点にはあまり着目されず、主流の考え方とされていなかったのが実情です。
飯島(博報堂買物研究所) しかし、消費者購買パネルデータを見ると、こうした考えを改めたほうが良いのではないかと思えるような結果が見えてきます。
この表は、2014年から2024年の10年間の日用消費財におけるカテゴリー100人あたり購入点数をまとめたものです。比較すると、この10年で「自分用」の買物点数が伸びており、その伸び率は「(家族と)共有または家族用」よりも高い結果でした。まだ全体の買物点数のうちの23%ではありますが、家族と暮らしながらも「自分用」の買物をする行動が定着し始めているようです。
なお、データをさらに読み解くと、これはコロナ禍後に強まっているトレンドだとわかります。「(家族と)共有または家族用」の買物は、コロナ禍初頭の2020年に急激な伸びを見せましたが、その後はダウントレンドです。一方、「自分用」の買物は翌年の2021年以降に伸びを見せており、今取り上げるべきトピックであることを再確認しました。