明日から実践できる! EC×自分用購入を喚起する四つの“コ”
飯島(博報堂買物研究所) EC通販×自分用の買物の実態がだんだんと見えてきましたが、ここからは得た示唆を踏まえつつ、EC担当者やマーケターがどのような戦略を立てていけば良いのか考えていきましょう。
私たちは、生活者アンケートの中から「共用せずにあえて自分用に買っている商品」と「その理由」を読み解くことであるヒントを得ました。それは、4つの“コ”です。右側には、具体的な生活者の生声を紹介しています。
岩崎(QO) 一つ目の“コ”は「個性」、これは自分の好きやこだわりを追求することを指します。たとえば、普段はみんなで分けるものを自分ひとりで独占してストレスを解消したり、自分がこだわっている健康法を実践するために自分用の買物をしたりといった行動が当てはまります。
趣味や嗜好品の買物は、このカテゴリーに含まれます。また、家族内でも個々人が理想とするウェルビーイングは異なるケースがあるため、こうした関連商材の買物も「個性」タイプに該当します。このカテゴリーの消費を促すには、「とことんこだわり抜いたものを買いたい」というニーズを満たす必要があるため、EC限定品など「EC通販であえて買う理由」を作らなければなりません。
飯島(博報堂買物研究所) 二つ目の“コ”は「個別」で、家族間でもセンスをすり合わせ過ぎない買物を指します。たとえば、調査の中でもシャンプーにこだわりをもつ母親と、特にこだわりがないそれ以外の家族といった構図は、多く見られました。「追求」というレベルまでは行かないものの、使いたいもののグレードやセンスが異なる際にお互い妥協はせず、別々のものを買う行動がこの“コ”に該当します。
ここで鍵になるのは、センスのすり合わせはしないまでも、お互いに尊重し合う姿勢をどこまで把握できるかです。値段が高すぎると同居家族に対する後ろめたさが出てくるため、生活レベルに応じた価格範囲で選択肢を提示するなどの工夫が重要になってきます。配慮の姿勢を踏まえると、前出のようにスペースを取りすぎてしまうのも課題なので、単身世帯向け商品のように小分けにするのも有効かもしれません。
岩崎(QO) 三つ目の“コ”は、「孤独」です。これは、「周りと共有したくない/家族にも買っているところを見られたくない買物」を指します。調査では、定額の有料動画サービスやパソコンなど、履歴を見られたくないといった理由から自分用の買物をするという声が多かったです。
そのほか、「共有したくない」という文脈では歯磨き粉もですし、ダイエットサプリなど家族に利用していることが知られたくないものも、このカテゴリーに含まれます。EC通販でこの需要に応えるには、受取用ロッカーへの配送に対応するなど、家族に購入したことがバレないような工夫が必要です。また、家族といる際にはじっくり検討できないため、EC通販で豊富な情報を提供すると「選びやすい」と感じてもらえるかもしれません。
飯島(博報堂買物研究所) 四つ目の“コ”は、「孤高」です。「家族には使いこなせない(自分しか扱えない)」「家族には必要ないはず(こだわっていないはず)」といった決めつけにも似た、自分用の買物を指します。このカテゴリーには、利用頻度に性別差があるものや、使用者が少ないようなカテゴリーの商品が含まれます。
これまでの“コ”は、個人消費を促すアプローチをお勧めしていましたが、「孤高」についてはむしろ家族と共用するメリットを呈示するのが良いでしょう。たとえば、「家族全員にとって安全安心な商品であることの明示」や「家族全員で使える利用シーンの想起・提示」といった働きかけが有効です。こうすることで、1世帯当たりの消費量が増えるため、企業側にとってもメリットがあります。
EC通販の戦略を考える上で「自分用の買物」は見逃せない需要です。アフターコロナで伸びている領域でもあるため、ぜひ四つの“コ”を念頭に対応・攻略していきましょう。今回のデータが、皆様のECサイトにおける訴求内容の改善や戦略検討に少しでも役立てば幸いです。