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N1レベルの声も実は大きなニーズかも? ソーシャルリスニングの重要性
橘田(TBWA HAKUHODO) まずは、65dBについて紹介したいと思います。65dBはTBWA HAKUHODO内のチームで、ソーシャルリスニングを通じて顧客の潜在的なニーズに耳を傾けることで、顧客に共感されるブランドづくりやマーケティング支援を強みとしている組織です。
昨今の日本では、普及率が80%を超えたSNSの影響を受け、商品やブランドをどう活用するかの主導権が生活者側に移りつつあります。こうした時代背景を踏まえ、私たちは「どんなモノが求められているのか」「なぜ買われているのか」といった生活者の本音に耳を傾け、カスタマーセントリックにマーケティングの課題解決を実現したいと考えています。
その上で、私たちがなぜソーシャルリスニングを取り入れているのかというと、ポイントは二つあります。一つ目は、企業の依頼によって行うアンケート調査と異なり、忖度のない生活者の「本音」が集められる点、二つ目は他プラットフォームのデータよりもリアルタイム性が高いため、発話されるデータを感情や行動まで定量・定性双方から分析することで、いち早くマーケットの兆しを捉えられるという点です。
実際、N1レベルでしか話題にされていない小さな変化も、実は多くの人が潜在的に望んでいるインサイトだったというケースが存在します。そのため、まだ世の中のトレンドや話題にはなっていないこうしたインサイトも私たちにとっては大切です。もし早期にこうした発見ができれば、ブランドの成長を加速できると考えています。
河野(博報堂買物研究所) 今回、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」を見つけるための調査の中で、生活者のリアルな声を長期的な広い視点から集めたいと考え、私たちは65dBと一緒に研究を進めました。
同調査で見つけた買物欲のツボを実際の買物現場で生かすには、「兆し」が重要です。ソーシャルリスニング時には、買物欲のツボ一つひとつに対して細かなキーワード設定を行い、それぞれの発話量を定量的に見た上での「伸び」に着目しました。
eコマース、リアル双方で買物欲を刺激するツボは何か
河野(博報堂買物研究所) 令和の“買物欲を刺激する20のツボ”は、前回の記事でも紹介したように大きく二つの観点で分けられます。
BOOSTタイプのツボ
- LOVE&BOOST:“買いたい”を“盛り上げる”
- REASON&BOOST:“買ってもいい”を“盛り上げる”
KEEPタイプのツボ
- LOVE&KEEP:“買いたい”を“維持”する
- REASON&KEEP:“買ってもいい”を“維持”する
河野(博報堂買物研究所) 今回、ソーシャルリスニングの結果をeコマースに絞って買物欲のツボと発言量の伸びの関係を分析したところ、次のような順番であることがわかりました。
- 利他・社会性
- 信頼感
- 限定感
- 偏愛性
- ストーリー性
- 驚愕・非日常
- 損失回避
特にeコマース特有の伸びを見せていたのが、KEEPタイプに分類される「信頼感」「損失回避」と、BOOSTタイプの「利他・社会性」「限定感」「驚愕・非日常」です。eコマースでもリアルでも「偏愛性」「ストーリー性」は共通するツボとして挙げられていました。この結果を踏まえて、各ツボの考察や今後の施策のヒントをお話ししたいと思います。