紙媒体の危機を動画で突破
━━本日はよろしくお願いします。まずは、貴社の制作室の役割と、動画内製化に踏み切った背景について教えてください。
新井 私は制作室という部署に所属しており、基本的には自社の通信販売における販促物の制作を担っています。元々はアパレルや家具・雑貨の商品をメインに担当していましたが、現在は化粧品や食品、日本酒、さらにはグループで展開するホテルや飲食事業の制作物まで幅広くカバーしています。
新井 動画活用に踏み切った最大の理由は、やはりメディア環境の変化です。新聞の縮小や紙自体のコスト上昇により、従来の紙媒体だけで利益を確保し続けることが難しくなってきました。一方で、ECサイト内での動画活用の重要性は高まっていると感じます。他社事例を研究しても動画を積極的に取り入れる企業が急増しており、我々も対応が急務だと考えていました。
━━コスト面でのインパクトも大きかったのでしょうか。
新井 そうですね。カタログ自体は外部で制作していますが、その他の新聞広告、折込チラシ、同梱チラシ、ダイレクトメールといった販促物は内製しております。ここを内製化によってコストカットし、利益に貢献するというのが我々のミッションでもあります。
動画についても各種紙媒体と同様にコストカットできていますし、紙だけでは伝えきれない商品の情報量や良さを、動画であれば補完できるという確信もありました。
未経験者9名からの挑戦:1年間の「リスキリング」が変えた組織
━━動画の内製化を始めた当初、動画制作のスキルやリソースはどの程度あったのですか?
新井 正直に申し上げますと、最初は全くのゼロ。経験者は一人もいませんでした。そのため、動画編集ソフト「Adobe Premiere」の習得が最大のハードルでした。そこでまず、外部のコンサルティング企業と1年間の契約を結び、月に一度のオンライン講義を通じて基礎から教えてもらうことにしたのです。
━━どのようなメンバーが参加されたのでしょうか。
新井 当時、制作室の約3分の2にあたる9名がリスキリングに参加しました。全員がもともと紙媒体の制作に携わっていたデザイナーです。その後、動画制作スキルのある中途採用メンバー1名と、リスキリングによって習得したメンバーの2名体制で本格的な制作をスタートさせました。
この2名で対応しきれないボリュームの案件が発生した際には、講義を受けた他のメンバーがサポートに回る。このように、組織全体で動画制作のベースラインを引き上げる体制を構築していきました。
━━いきなり大規模なチームを作るのではなく、既存メンバーのスキルアップを優先されたのですね。
新井 はい。まだ自分たちにどの程度の能力があるのか不透明な段階でしたので、まずは少人数で制作フローを確立し、確実なスキルを固めてから領域を広げていく「スモールスタート」にこだわりました。
