「暖かい」の競争から抜け出すための言語化
菊地(マクアケ) 本日はよろしくお願いします。まずは「もちはだ」ブランドの成り立ちと、独自の技術についてお聞かせいただけますか。
鷲尾(もちはだ) 「もちはだ」は1970年に私の祖父が立ち上げた、防寒に特化したブランドです。
最大の特徴は、独自の特許技術である「ワシオ式起毛」にあります。一般的な起毛は、編み上がった生地のループを針でカットして毛を立てます。この断面が尖っているため、肌触りがチクチクしがちです。髪の毛で想像すると分かりやすくて、抜けた毛はチクチクしませんが、美容院で切られた後の毛は首に落ちると異常にチクチクします。断面が尖るからです。
一方で私たちの技術は、編むのと同時に起毛を行い、ループを壊さずに優しくほぐして長い毛を立たせます。糸の「腹」が肌に当たるため断面がなく、圧倒的に肌触りが良い。この機械そのものを自社で開発していることが、私たちのコアな価値です。

菊地(マクアケ) 「もちはだ」という名前の通り、一度触れると忘れられない柔らかさですよね。
鷲尾(もちはだ) ありがとうございます。ただ、この価値をどう伝えるかには試行錯誤がありました。そこで掲げたのが「世界から寒いをなくす」というコンセプトです。
世の中には大手メーカーを含め「暖かい」を謳う肌着が溢れています。その多くは「発熱」という、冷えた後に熱を加えるアプローチです。しかし私たちは「保温」に着目しました。そもそも体が震えるような「寒い」という生理反応を起こさせない状態を作る。
人は体が震えたり鳥肌が立ったりして初めて「寒い」という感情を持ちます。その反応自体を未然に防ぐ。この「体験」を言語化したことが、競合と比較されない独自のポジションを作る第一歩になりました。
「Makuake」を「認知の窓口」として活用する
菊地(マクアケ) そのコンセプトが初めて世に出たのが、2016年の「Makuake」でのプロジェクトでしたね。
鷲尾(もちはだ) はい。当時、私は中国から家業に戻ったばかりでした。会社の数字を見て愕然とし、再生を急いでいた時期です。「もちはだ」は認知されれば必ず売れるという確信がありました。いかに効率よく、広告費をかけずに認知を広げるかが課題でした。そこで「Makuake」を広報していくための手段として活用することに決めたんです。
菊地(マクアケ) 実際にプロジェクトを開始して、どのような変化がありましたか。
鷲尾(もちはだ) 一番の収穫は、それまでの販路では絶対につながらなかった層と出会えたことです。スタートアップやIT系といった新しいことに挑戦している方達とつながる窓口になりました。
また、それまで1万円を超えるアイテムがなかった「もちはだ」で、1万円を超えるラグランTシャツが飛ぶように売れました。これは社内でも大きな衝撃でした。ストーリーを添えて正しく価値を伝える。そうすることで、価格競争に巻き込まれず、適正価格で選んでいただけるブランドへの転換点になったと感じています。
