CPA高騰に苦しむD2C事業者 プレイヤー増加や法規制が足かせに
EC、とりわけD2Cビジネスを取り巻く環境は、この数年の間で絶えず変化している。対応すべきことが増える中、変化にどう追いついていけば良いのか模索している企業も多いだろう。広告業界などを経て、長年マーケティング領域に携わってきたイルグルム アドエビス事業推進本部 マーケティング部 部長 金田耕一氏は、「広告にかけるコスト」と「コスト回収効率の悪化」が企業の成長を阻んでいると話す。
「数年前よりD2Cブームが続いていますが、それによりライバルが増加していると実感している企業もいらっしゃるでしょう。ライバルと差をつけるには、広告投資を強化し配信面を確保する必要があるため、コスト勝負になります。加えて、薬機法や景品表示法などの規制強化により過度な広告表現は制限され、業界全体でCPAが高騰している状況です。
獲得効率が下がると、広告へ投資したコストの回収期間が長期化してしまいます。D2Cにおいては広告費を投じて新規顧客を獲得後、リピーターを生むことで広告費を回収し次なる投資を行うビジネスモデルが多いです。ところが、広告投資の回収期間が長くなればなるほど、このサイクルは鈍化していきます。その結果、事業規模が徐々に縮小していく流れができあがっています」
今や、広告投資コストの効率化とLTV改善によるリターン向上が、企業にとっての最重要課題ともいえる。とくに新規獲得においてウェブ広告への依存度が高いD2Cは、この傾向が顕著だ。
しかし、現場が抱えている課題はこれだけではない。金田氏によれば「担当者の多くが、データ分析や次に実行する施策の検討に十分な時間を割くことができていない」という。
「マーケターを対象に当社が行った独自の調査から、調査対象者の60%がデータ集計やレポーティングなどの作業に1日あたり平均1時間以上かけていることがわかりました。『データ分析、改善案の検討』『施策の効果検証』工程への注力・効率化を重視しているという結果も出ています。
施策の効果を分析して改善案を策定するには、事前のデータ収集や社内外へのレポーティングが必要不可欠ですが、かなりの手間がかかります。本来であれば優先的に注力したい作業に、リソースや工数を費やすことができないマーケターが多いのも事実です」
こうした課題に苦しんでいる企業が存在する一方で、着実に成長を遂げている企業も存在する。その違いはどこにあるのだろうか。
「当たり前のように感じるかもしれませんが、成果を出している企業は広告施策のPDCAサイクルを適切に回すことができています。そのための体制づくりを社内外問わず行っていることも特徴です。これが、すべてのD2Cにおける『あるべき姿』だと考えています」