先回りで案内・提案を EC=セルフサービスではない
従来、ECを含めたオンラインサービスの顧客体験は、ユーザー自身が目的とするものを探したり、問題を解決したりすることを前提に設計されてきた。しかし昨今、さまざまなフリクションを解消するには、サービス提供者であるEC側から「先回りで案内・提案していく必要がある」と深田氏は語る。
事例:ユーザーの目的に合わせて最適な案内をする
SKUやコンテンツの数が多いECサイトほど、トップページからの導線が枝葉のように分かれ、とくに初訪問時は目的の商品ページを見つけることにストレスを感じるユーザーも現れる。こうしたフリクションを防ぐ上で有効なのが、トップページを訪れたユーザーに声がけをすることだ。
「当事例ではポップアップで声かけし、行き先としてよく選ばれるページの選択肢を4つ表示しました。実店舗で、目的に応じたフロアまでインフォメーションスタッフが誘導するイメージです。これにより、購入完了改善率が116%となりました」(深田氏)
事例:まだ使っていない機能の利用を提案する
ユーザーの行動を分析し、「未利用だが、ユーザーの行動パターンを踏まえたら利用してほしい機能」の利用を提案することも、今後発生し得るフリクションを防ぐ観点から効果的だ。
たとえば、あるECサイトではこれまで「絞り込み検索」機能を利用していないユーザーに対し、商品検索後に同機能の案内をポップアップで表示。多数の商品が表示されたタイミングで利用を促すことで、購入完了改善率113%を記録している。
深田氏は、ここでユーザーのセルフサービスを前提とした顧客体験設計が成立しづらくなっている理由について次のように言及。ひとつめは「コロナ禍でデジタルに不慣れなユーザー層のEC利用が増えた」こと、ふたつめは「ストレスを嫌うユーザーの増加」が背景にあると言う。
「意外に思われるかもしれませんが、デジタルネイティブと呼ばれるZ世代も、Web上でのストレスを敬遠する傾向が強いです。できるだけユーザーに手間をかけないようにして離脱を防ぐよう、意識しましょう」(深田氏)