SHIPS・トイザらス事例紹介 「待てない顧客」への対処法は?
続いて北岡氏は、「ミライの検索」と称してgoo Search Solutionで新たな検索体験の構築に取り組む企業の事例を紹介。ひとつめは、セレクトショップ「SHIPS」の事例だ。
SHIPSの自社ECサイトでは、キーワード検索を行うと商品だけでなくコーディネートや特集、スタッフの情報が表示されるようになっている。検索結果一覧ページの上部には、「アイテム」「スタイリング」といったタブを設置。種類の異なる情報を整理して表示することで、顧客へスムーズな検索体験を提供している。
「近年、商品にまつわる情報やコーディネートなどのコンテンツを強化する企業が増えています。検索でこれらを表示すれば、探している商品と親和性の高いコンテンツを表示でき、コンバージョンの向上にもつながります」(北岡氏)
ふたつめに紹介したのは、おもちゃ・ベビー用品の専門店「トイザらス」の事例だ。同サイトでは、「ブラックフライデー」とキーワード検索した際には、商品の検索結果ではなく、該当する特集ページに直接遷移する仕様となっている。
「ブラックフライデーと検索する顧客の深層心理を紐解くと、同一名の商品を探しているわけではなく、セールイベントで値引きされている商品やそれらがまとめられた特集コンテンツを探しに来ていることがうかがえます。こうした顧客のインサイトをくみ取り、検索に組み込むことも、goo Search Solutionでは可能です」(北岡氏)
さらに北岡氏は「パーソナライズ検索」の可能性に言及した。顧客1人ひとりにあった提案はマーケティングの文脈ですでに実践する企業も多いが、「検索にも対応している企業はまだそれほど多くない」と語る。
たとえば、冬に「スコップ」と検索した顧客が北海道に住む場合は雪かき用のスコップを、沖縄に住む場合は園芸用のスコップを上位に表示するといったように居住地や現在地に応じて検索結果を出し分けるのもパーソナライズと言えるだろう。実際にある小売ECでは、「砂糖」と検索した顧客が法人顧客の場合は業務用を、個人顧客の場合は家庭用を上位表示するといったような取り組みをすでに実施しているそうだ。
「当社が実施したアンケートでも、36.7%の顧客が『過去の自分の履歴や行動履歴から、自分に合った商品を選んで表示してほしい』という意向を示しています。とくに若年層ほど、パーソナライズに対して肯定的です。これはYouTubeやTikTokなどでOne to Oneの提案に慣れていることが理由だと考えられます。また、この結果は『自分に合わない情報が表示されることにストレスを感じる顧客が増えている』ととらえることもできるでしょう」(北岡氏)
同アンケートでは、パーソナライズを求める場面・場所についても聴取している。もっとも多かったのは「検索結果」だが、この結果は北岡氏も予想外であったと補足した。しかし、検索は欲しいものを見つけるための行動であることを踏まえると、パーソナライズでスピーディーに該当する商品へたどり着きたいという需要の高さは当然と言える。
ここで北岡氏は、検索結果の最適化による成功例を紹介した。まずは、製菓・製パン材料を扱うECサイト「cotta」の事例だ。同サイトはパーソナライズの実施により商品のマッチ度を向上させ、goo Search Solution切り替え後の法人向け商品検索CVRを1.7倍以上に伸ばしている。
ほかにも検索精度の改善による成功事例として紹介したのは、TSIホールディングスが運営するアパレルブランド「ナノ・ユニバース」の事例だ。同ブランドは検索結果の最適化を行い、CVRを85%アップさせている。売上は2倍超、ひとりあたりのPVが1.5倍となっている点もポイントと言えよう。
また、さらなる事例として北岡氏は再びトイザらスを挙げた。人手による検索改善の工数を大幅に削減したことで、同社はECと実店舗のシームレス化促進に工数を割くことができたと言う。検索が直接もたらした効果については、0件ヒットの改善やCVR400%アップなどが紹介された。
「goo Search Solutionでは、このほかにもさまざまな導入事例を紹介していますので、ぜひ参考にしていただければと思います」(北岡氏)
最後に北岡氏は、検索がもたらす効果についてこのように語りセッションを締めくくった。
「AIは継続的な学習により効果を発揮するため、時間が経つほどじわじわと効果が上がる傾向にあります。また人間と異なり、疲れることも退職することもありませんので、継続した細部までの最適化が可能です。ECサイトの成否を分けるロングテールをカバーするには、AI活用が必須となります。AIによる最適化を繰り返すことで顧客体験は向上し、売上という結果にも結びつきます。
今は時代の流れが非常に速くなっており、『待てない顧客』も増えています。つまり、ECサイトにおいては迅速性も重要です。トレンドをとらえ、顧客が求める検索結果をいかに速く表示できるか、それらを実現できる機能や体制構築にも目を向け、一度見直しをしてみてはいかがでしょうか」(北岡氏)
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