顧客が求める検索結果を作るための2ステップ ロングテールの磨き込みが鍵に
では、なぜすでにECにサイト内検索を実装しているにもかかわらず、欲しい商品が見つからない状況が生まれるのだろうか。その理由として、北岡氏は「対応範囲の広さ」「専門技術の高さ」「スタッフ個人のスキルへの依存」の3点を挙げた。
ECサイト内検索で顧客の満足度を高めるには、ロングテールのキーワード攻略が鍵となる。たとえば「ゴミ箱」を探している顧客が10人いた場合、全員が同一キーワードで検索するケースは稀だ。「ゴミ箱」「ごみ箱」「ダストボックス」「ごみ入れ」といったように入力される単語は多岐にわたり、すべてのキーワードを人間の手で拾い、対応するには限界がある。
また、世にあふれる機能であるため誰でも触ることができると思われがちだが、実は高度な専門技術を要する点も、検索の磨き込みが進まない理由のひとつと言えるだろう。手動で精度を上げるのは担当者のスキルへの依存度が高く、業務の属人化や担当者の退職・異動などによるノウハウの消失といった問題も存在する。
「検索を導入して終わりにしていないか。EC利用者が増える今こそ、一度立ち止まって考えていただきたいと思っています。ツールの導入はあくまでスタートラインです。キーワードに合致した商品を表示するだけでなく、検索結果に顧客が求める商品がきちんと表示されているか。『商品を見つけて、買ってもらう』という検索の本来の目的に立ち返り、見つけてもらうための調整や工夫が必要です」(北岡氏)
「顧客が求める商品を表示する検索の実現には、大きく分けてふたつのステップがある」と続ける北岡氏。第1ステップは、「キーワードを正しく解釈する」作業だ。たとえば「レンジ」というキーワードで検索された際、部分一致の「オレンジ」ではなく、略称として定着している「電子レンジ」を表示する。これは、自然言語処理の主要テーマのひとつである「形態素解析」と呼ばれる作業であり、「顧客が何を求めているかを理解すること」ととらえるとわかりやすいだろう。
第2ステップで重要となるのが、「表記のゆれを吸収する」という作業である。「ゴミ箱」のように、ひとつの商品をとってもさまざまな表記が存在する。これらを吸収して目的に合致した商品を表示できる状態にすることは、検索の利便性を高める上で欠かせない。
なお、表記ゆれの種類は「大文字/小文字」「送り仮名」「数字」「ひらがな/カタカナ/漢字」など多種多様だ。ヒューマンエラーにより起きる「入力ミス(勘違い)」も見逃せない要素となる。
「顧客が求める商品を検索結果にきちんと表示するには、正しいキーワード理解と表記ゆれの吸収は欠かせません。その上でさらに成果につなげるには、顧客が求める順番に並び替えて表示させることも必要です」(北岡氏)