限界CPAを決めただけでは実務に活かせない
ECグロース支援を行うPALA株式会社の兒嶋仁視です。ECビジネスのスタンダードを整理し直して、WHY・WHAT・WHOの議論をしていく連載の第6回です。
前回の記事では、広告投資の上限を判断するための基準として、「限界CPA」の考え方を整理しました。 LTVを利益ベースに引き直し、さらに回収期間まで踏まえて、「顧客獲得にいくらまで使ってよいのか」を考えることが重要、というお話でした。
ただ、限界CPAを設計できたとしても、それだけで実務がうまく回るわけではありません。なぜなら現場では、広告運用の改善に使う数字と、事業として投資判断を行うための数字が、しばしば同じように扱われてしまうからです。
たとえば、広告媒体の管理画面の成果は、日々の運用改善には役立ちます。 一方で、媒体横断での傾向把握にはGA4のような分析基盤も必要です。さらに最終的に、「この投資は妥当だったのか」を判断するには、受注や売上の実態ベースで数字を見る必要があります。
今回は、限界CPAを実務で機能させるために、どの数字を何の判断に使うべきかを整理します。管理画面上の見え方に振り回されず、事業として広告投資を判断するための基本を考えていきましょう。
数字の役割を分けて考える
実務においてCPAは、ひとつの数字として扱うのではなく、役割ごとに分けて考えたほうが整理しやすくなります。 大事なのは、複雑な分析をすることではなく、それぞれの数字に役割を与えることです。
まず、広告媒体の管理画面で見る数字は、媒体の中で改善を進めるためのものです。どのキャンペーンが効いているのか、どのクリエイティブが反応しているのか、どの入札調整が効いているのか。こうした運用改善には、媒体管理画面上の数字が最も使いやすいでしょう。
一方で、GA4のような分析基盤の数字は、媒体を横断して全体傾向を把握するために向いています。広告以外の流入も含めてチャネル全体を俯瞰したり、サイト内行動とつなげて見たりするには有効です。
そして、事業として最終的に「この投資は妥当か」を判断するには、実際の受注や売上に近い数字を見る必要があります。限界CPAはそもそも、事業として顧客獲得にいくらまで使えるかを判断するための基準です。であれば、比較対象もまた、できるだけ実態に即した数字であるべきです。
つまり、数字はひとつに揃えるべきなのではなく、役割ごとに使い分けるべきなのです。
