Z世代の半数はF1・M1層に 店舗とECの連動で顧客体験はより豊かになる
社会環境や顧客行動の変化・多様化に対して、ビジネスにもさまざまな変革が求められている。とくに近年、実店舗にとっての重要課題とされているのが、店舗における「DX(デジタルトランスフォーメーション)」および、オンラインとオフラインを融合する「OMO(Online Merges with Offline)」の推進だ。
なぜ、店舗においてDXやOMOが求められるのか。その理由のひとつに、山崎氏は主要購買層の変化を挙げた。
「デジタルネイティブ/スマホネイティブと言われるZ世代の半数程度は、すでにさまざまな分野でメインの購買層となるF1・M1層の年代(20~34歳)になっています。彼らは生活のあらゆる場面で当然のようにデジタルを活用しており、それは店舗での買い物でも同様です」(山崎氏)
Z世代に限らず、店舗内でスマートフォンを用いて商品情報を調べる顧客は増加傾向にある。かつてはそのような行為に少なからず難色を示す店舗もあったが、それはもはやナンセンスだと山崎氏は指摘する。
「デジタルの活用は、基本的にCX(顧客体験)を向上する上で有効に作用します。顧客が店舗内で商品についてスマートフォン検索をするのは、『買い物で失敗したくない』『納得のいく買い物をしたい』という気持ちがあるからです。店舗を運営する企業・ブランドは、顧客がよりデジタルを活用した買い物がしやすくなるように協力すべきと言えます」(山崎氏)
その際に懸念となるのが、店舗をショールームとして利用され、最終的に他社のECで購入されてしまうことだ。スマートフォンで商品情報を調べると、行き着く先がECの商品ページであるケースも多い。すぐに持ち帰る必要のない商品や、書籍・音楽・映像ソフトのようにデジタルデータとしても流通している商品などは、たまたま検索結果でヒットしたEC上でそのまま購入ページまで遷移することも十分に考えられる。
しかし、それでは自社の売上にならず、目の前にいる顧客をみすみす逃してしまうことになる。これを防ぐ方法について、山崎氏はシンプルに「自社が運営するECに誘導すること」と解を明示した。
「たとえ、店舗ではなくECで購入されたとしても、最終的に自社ECの売上となれば、企業・ブランドとして問題はないでしょう。かつては社内の組織的事情などから、店舗とECを対比・対立する存在としてとらえることもありましたが、そのような考えかたはもはや通用しません。
店舗は『場所』であり、ECは『手段』です。CX向上という目的のために、これからは店舗においてECをツールとしていかに活用するかが重要です。これこそが『店舗でのデジタル活用支援』であり、OMOの取り組みにおけるファーストステップでもあります」(山崎氏)