OMOが進むほど重要度を増す商品検索 顧客の期待に応える情報提供を
店舗でのEC活用は、CX向上に寄与するとともに、店舗にとっても多くのメリットをもたらす。そのひとつが店舗在庫の軽減だ。後日配送が一般化している大型家電製品や家具のほかにも、顧客にとって後日受け取りで差し支えがない、もしくは自宅で受け取りができたほうが都合が良いという商品は多い。こうした商品の在庫をECと共通の倉庫・配送センターに保管すれば店舗スペースに余裕が生まれ、代わりに実店舗ならではの機能と言える体験スペースの拡充などへの有効活用が可能となる。
では、店舗におけるEC活用の大前提となる「自社ECへの誘導」を成功させるにはどうすれば良いのか。もちろん店舗内でスムーズにECへ誘導するような仕組みの検討・実践も欠かせないが、それ以前に重要となるのが「ECに必要とされる要素を正しく理解し、それらを備えた自社ECをしっかりと構築・運用すること」だと山崎氏は強調する。
「ECの主要機能は、『商品検索』『決済』『配送』の3つです。このうちマーケティング要素となるのは商品検索で、売上を上げるための頑張りどころと言えます。多くの顧客は『商品を探したい』あるいは『商品のことを知りたい』と考えて、自社ECにアクセスします。検索機能が弱い自社ECは、それだけで顧客の期待を裏切ってしまうと考えてください」(山崎氏)
なお、商品検索には検索機能そのものだけでなく、顧客が商品を探す行為をサポートする機能すべてが含まれる。たとえば、トップページに売れ筋の商品を表示しておくのも商品検索の一部ということだ。
また、現状の一般的な商品検索では「誰が」「いつ」「どこで」検索を行っても、まったく同じ検索結果が表示されるケースがほとんどである。ここで山崎氏は、検索結果のパーソナライズにより他社との差別化が可能なEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を紹介した。
「顧客の登録情報や購買履歴などを組み合わせて分析することで、同一キーワードで検索しても顧客ごとに異なる検索結果が表示されます。ほかにも、パソコンやスマートフォンといったようにアクセスするデバイスや時間帯、在庫状況によっても検索結果が変動するように設計しました。検索結果はマーケティングであり、パーソナライズして然るべきと考えています」(山崎氏)
店舗でECが用いられる割合が増えれば増えるほど、商品検索のクオリティーが店舗の売上、ひいては企業・ブランド全体の売上にもたらす影響は大きくなっていく。「店舗DXやOMOの推進は、必ずしも前向きな『攻め』の取り組みばかりではなく、こうしたマイナスの影響や成長を妨げる要素を少しでもカバーするための『守り』の取り組みとしても重要」だと山崎氏は続けた。