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2024年8月27日(火)10:00~19:15

季刊ECzine vol.17特集「Face to D2C~つながりの連鎖がビジネスにもたらす変革とは~」

世界に羽ばたく老舗工具箱メーカー 東洋スチールと顧客をつなぐShopify 直販の可能性と未来を語る

 Shopify 活用で販売力を強化。東大阪から日本のものづくりの素晴らしさを伝える。 ※本記事は、2021年6月25日刊行の『季刊ECzine vol.17』に掲載したものです。

 1969年、1枚の鋼板に圧力を加え成形する深絞り技術を用いて、世界で初めてスチール製のツールボックスを作った企業が大阪府東大阪市に存在する。その名は、東洋スチール株式会社。これまでBtoB向けに工業向け製品を製造・販売してきた同社が、2021年2月にコーポレートサイトを大幅リニューアルし、越境ECにも対応した直販を開始している。今、同社がこのような取り組みをスタートした意図や、中長期の目標として掲げる「100年企業」に向けた展望について、代表取締役の久司泰二さん、企画・マーケティング・広報の君岡茜さんに話を聞いた。

(写真左)東洋スチール株式会社 代表取締役社長 久司泰二さん
(写真右)東洋スチール株式会社 企画・マーケティング・広報 君岡茜さん

販売とブランディングを両立するShopify活用

 東洋スチールがEC機能を持つコーポレートサイトのリニューアルに着手したのは、2020年の夏。日本のものづくりやデザインプロダクトの国内外拡販に携わりたいという気持ちで、同年7月に中途入社した君岡さんの提案がきっかけであったと言う。

「当社は2010年頃からAmazonでのBtoC販売を行っており、年間数千万円規模の売上を獲得しています。入社当初、社長からの要望は『EC売上増のため、国内別モールへ出店してほしい』というものでした。しかし、私はBtoBで20ヵ国と取引を行う当社の実績や行く先を踏まえ、日本国内に閉じた販路拡大ではなく、全世界とつながる場を作ったほうがよいと考えたのです。そこで、販売機能を備えたコーポレートサイトの構築を提案しました」(君岡さん)

 久司さんは当初、「少ない社員数でEC売上を作る上で、モールはたいへん相性がよく、Amazonのみでここまで売上が生まれるならば、他モールへ出店しても効果が出る」と見込んでいたと言う。しかし、君岡さんからブランディングの重要性やコーポレートサイト・ECサイトを一挙に構築できるShopify活用の利点を聞く中で、大きな成果を見込めると判断し、GOサインを出した。

「ちょうど新聞などで、Shopifyが『Amazonキラー』と呼ばれ始めた頃でもありました。メインミッションは『EC売上を増やすこと』ですが、目標から逸れなければアプローチの仕方は私の指示通りでなくてもよいと思っています。Shopify活用については、目先の売上獲得以上に中長期のビジネス視点での提案をもらい、未来が見えたのでやってみようと決断しました」(久司さん)

 東洋スチールに入社する以前は、マーケティングコンサルティングや、日本メーカーの海外事業展開にかかわっていた君岡さん。海外での学生生活経験を活かし、世界中から情報を収集する中で「Shopifyの動向に注目していた」と語る。

「バルミューダやHydro Flask、Stella McCartneyなど国内外のサイトを見て、ブランディングとEC機能が一体化している点に学びを得ました。実際に自分がShopifyで構築されたECサイトを触る中で感じた快適性や、スモールビジネスを支援するShopifyの創業者・Tobias Lütke氏の思想にも共感し、アメリカの友人らや国内外のIT有識者の方々の声も踏まえた上で、たとえ日本のメーカーの中ではアーリーアダプターであろうと、この波に乗って損はないと感じたのです」(君岡さん)

 入社直後から自社ブランディングを見直し、Shopifyを活用したサイト構築プロジェクトチームを組み、リリースまでの期間はわずか半年ほど。コスト・スピード感に対する満足度はさることながら、オープン当初から思いがけぬ成果を得たと言う。

「当サイトがインバウンドセールスの役割を果たしており、新たな取引を希望する企業からのお問い合わせ件数が一気に増えています。多言語対応により海外企業からも問い合わせが多く、ビジネス拡大のハブとして早速機能しています」(君岡さん)

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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