ペーパーレス化で市場は縮小 それでも利益が出せる理由
──「インクのチップス」は、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の常連ですよね。同サイトを運営するキュリエとは、どのような企業なのですか。
吉塚 当社は、互換トナー、インクカートリッジの専門商社としてスタートしました。メイン店舗であるインクのチップスは、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECサイトに展開しています。加えて、「ヨコハマトナー」「インクファクトリー」「エコスロバキア」の3ブランドも抱えており、それぞれECモールで商品を販売しています。
最初にEC事業を始めたのは、2012年です。ニッチな商品ですが、10年以上EC運営を続けてきました。お客様からの信頼が得られている自信があります。2024年の売上24億円のうち、20億円がEC事業によるもの。また、全社員43人中23人がEC事業部門に所属しており、経営の重要な柱となっています。

──近年はDXの動きもあり、紙で情報を保存する機会が減ってきています。印刷に使われるインクの需要も、減少しているのではないでしょうか。
吉塚 そのとおりですが、それでも「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」では、「パソコン・周辺機器」ジャンルで大賞を初受賞できました。
たしかに、各企業ではペーパーレス化が進んでいます。一般家庭でも、最近はなかなかプリンターを置いていないでしょう。一人暮らしの若年層では、年賀状を送る機会も少ないはずです。一方で、実は新しいプリンターの機種は頻繁に発売されています。その分、トナーやインクカートリッジの型番も増えているのです。
全体の需要が減っているため、家電量販店のトナー・インクカートリッジコーナーの面積は狭まっています。新しい型番が優先的に並ぶのは、自然なことでしょう。すると、お客さまがどうしても必要になって買いに行っても、古い型番は取り寄せなければなりません。それならば、オンラインで購入しますよね。
実店舗からEC購入の流れは、かなり強いと感じています。実際、需要の減少による大きな影響は受けていません。
──オンライン購入を検討している顧客から選ばれるには、どのような工夫が必要だとお考えですか。
吉塚 長年、専門商社としてEC販売をしてきた実績があります。それなりに知名度も上がってきましたし、レビューも蓄積されています。初めて訪れた人も、安心して購入できるのではないでしょうか。
また、当社が取り扱う商品は価格と質のバランスが良いです。インクは、低価格な商品も多くありますが、品質の差が出やすいもの。当社では、純正品に追いつけなくても、“丁度良いコスパ”の商品を取りそろえています。一定ラインの品質を担保することで良いレビューも増え、新規顧客が購入を判断しやすくなるのです。