ファブレスメーカーとして、素材開発から商品企画・生産・物流までを支援する三菱商事ファッション株式会社。これまでOEM・ODMを中心にビジネスを展開してきた同社が2021年3月、新たにD2Cブランド「NAGIE(凪へ)」をローンチした。これまでBtoBビジネスを主軸としてきた同社がBtoCビジネスに挑戦する意図や、ECでものを売る上での戦略、想いについて、ブランド運営に携わるデジタル事業推進本部EC事業部の茨城聡さんに話を聞いた。
アパレルビジネスの新形態を自ら作り上げ、広める
NAGIEは、三菱商事ファッションがサステナブルな価値を提案するD2Cブランドだ。同社が開発したリサイクル素材を使って受注生産で販売を行い、必要な数量だけ生産するなど、新たなアパレルビジネスの確立を目指している。
三菱商事グループのアパレル商品供給取引を担う企業として、OEM・ODMを手掛けてきた同社が自社ブランドを立ち上げた背景には、アパレル業界にもたらされた大きな潮流の変化がある。大量生産・大量消費時代からの脱却を目指す動きや、顧客の嗜好が多様化する中でECの普及も後押しし、顧客の声を商品開発やサービス提供に反映するD2Cブランドは増加。年々存在感を増しているのが現状だ。
購買行動データや売上の動向、顧客の意見・要望を踏まえ、素早く対応しながら短期間で小ロットの商品を展開・販売するD2Cブランドのありかたは、既存のアパレルのビジネスモデルとはまったく異なるものと言える。今後新たなビジネスモデルへの対応は欠かせないと判断した同社は、まず自らがD2Cブランドを運営し、最前線に立って知見を得ながら前に進むことを決めた。その流れで誕生したのが、2020年に立ち上げた「THE ME」と「NAGIE」だ。
「持続的にビジネスを続けていくには、サービス提供の幅を広げることは欠かせません。そして、この業界がよりよい形であり続けるためには、ものづくりに携わる立場から、新たなビジネスモデルを提起することも必要と考えました。その結果、実際にD2Cブランドを運営するという答えに行き着いたのです。
当社がお客様と直接接点を持つのも新たな試みとなっています。取り組むからには多くのお客様と出会うことを目指していますが、NAGIEでの挑戦からこれからの時代のものの作りかたや売りかた、少量生産でも成り立つ新たなOEM・ODMの仕組みを見つけ出し、さまざまな企業・ブランドの皆様ともつながりを深めていきたいです。商社のグループ企業が今の時代でできることを体現することがポイントだと考えています」