流通・小売業界の競争が激化し、各社が独自の取り組みや商品で勝ち残ろうとするなか、「この会社と言えば○○」と想起される目玉商品を抱えている企業は強い。キューサイは、まさにその代表例だ。1990年代初頭にキャッチーなTVCMで知名度を上げ、長く愛され続けている青汁は同社の武器と言えるが、世間に根付いたそのイメージにより、ある課題を抱いていた。課題解決と事業の成長を見据え、創業55年となる節目の年に彼らはある決断をした。その決断の意図と、同社が大切にしていることをマーケティング統括部営業企画部広報課の西澤さんに聞いた。
顧客の声に応える キューサイの商品開発手法
青汁の知名度が高いキューサイだが、1965年の創業当初は博多で菓子の製造販売を行う企業であった。その後、冷凍食品のOEM事業で業績を伸ばしながらも、創業者が病に倒れ後遺症に苦しむなかで出会ったケールがきっかけで、1982年に冷凍タイプの「キューサイ青汁」を発売。「まず~い、もう1杯!」のTVCMで知名度を上げた当時は、各家庭に手渡しで商品を届ける訪問販売形式にて事業を拡大、2002年には共働き世帯の増加による生活スタイルの変化に合わせ、粉末タイプの青汁販売と通信販売事業を開始した。
キューサイの商品開発は、常に顧客の声が起点となる。粉末タイプの青汁販売も、家庭への冷凍食品普及にともなう「冷凍庫に青汁が収まらない」という顧客の声を受けたものだ。青汁を定期購入するロイヤルカスタマーが歳を重ね、関節の痛みに悩む声を聞けば「ひざサポートコラーゲン」を開発、健康寿命の延びにともない中高年からの美容に対するニーズが高まれば、スキンケアラインの「コラリッチ」で応える。一見、青汁やケールと接点がなさそうな商品も「すべては青汁を愛飲するお客さまから始まっている」と西澤さんは語る。
顧客の声は、新商品開発のヒントのみに留まらない。キューサイは、顧客から商品使用を通じて実感した効果に関する声が寄せられた際、それらに科学的根拠があるかどうか、専門家と効果検証を行っていると言う。これらは、研究開発やマーケティングの有力な材料にもなり得るからだ。