メルカリはSNSの延長線上にある? 広告事業参入の裏側
田中(Yuwai) 今年の2月に「メルカリAds」が発表されたときは衝撃でした。なぜ、サービス立ち上げに至ったのでしょうか。既存事業でもある程度の売上規模がありますし、広告収益に依存する必要もないように思えます。
赤星(メルカリ) “スタートアップマインド”を大切にしているので、ポテンシャルのある事業はスピードを意識して参入していっています。私自身は2年前に入社しましたが、当時から広告事業の可能性は非常にあると感じていました。国内企業でここまでのお客さま基盤を有しているケースは珍しいですし、活かさない手はないです。
もちろん、ハードルもあります。今までも様々なプラットフォーマーが広告事業を展開してきましたが、やればやるほどGoogleやMetaといったグローバルプラットフォームの強さに圧倒されるんですよね。テクノロジーだけで勝負するのは難しいのが、正直なところです。しかし、既存のお客さま基盤を活用すれば、成果につなげられると思います。
また、一般消費者が売り買いしている「メルカリ」に広告を出して、どこまで効果があるのかも議論しました。それもあって、まずは外部サイトへ誘導するオフサイト広告に注力しています。メルカリのお客さまは、必ずしも「これが欲しい」と目的をもって買い物をしているわけではありません。そのため、様々なパターンの広告を試している段階です。

田中(Yuwai) たしかに、オフサイト広告に力を入れるのは正しい選択だと私も思います。とはいえ、トラフィックを外部に流すには障壁があったはずです。現時点の手応えはどうですか。
赤星(メルカリ) 実際のところ、広告事業の売上は右肩上がりです。広告主にとっても成果が得られている証でしょう。
ただし、おっしゃるとおりで外部にお客さまを誘導するのは、企業として大きな判断でした。経営の軸であるメルカリ内のGMV(流通取引総額)に、どんな影響があるのだろうかと。広告を配信するグループと配信しないグループに分けて、商品の買われ方がどう変わったか、注意深くモニタリングしてきました。
広告に限らず“新規事業あるある”ですが、企業全体で見てマイナスの影響が出ていると長続きしないですよね。広告事業だけでなく、メルカリにとってもプラスになっているかは非常にシビアに見ていました。
田中(Yuwai) 満を持してのリリースだったんですね。
赤星(メルカリ) そういいたいところですが、リリース前後で四苦八苦していたのは事実ですね。当社のサービスに誘導するオンサイト広告と違って、オフサイト広告だと実際のカスタマージャーニーを捉えるのが難しいですから。
いえることは、過去の調査によるとメルカリでのお客さまの滞在時間は、BtoCの大型ECモールと比較して倍以上長いんです。ECモールは目的買い、メルカリは「ながら見」が多いのでしょう。ある種のコンテンツとして消費されているのだと思います。SNSの延長線上のような。これによって、広告との接触頻度が増えるため、オフサイト広告にはポジティブにはたらいています。