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令和の消費者はどんな“買物欲”を有しているのか?
垂水(博報堂買物研究所) 博報堂買物研究所(以下、買物研)では、2007年に「買物欲」という概念を提唱しています。私たちは「買物=『いいものを手に入れたい(モノ欲)』+『いい買物体験をしたい(買物欲)』」と分解して考え、方程式を作りました。
現代の世の中には良い商品が多く、機能価値だけでは差別化が難しくなっています。また、各社のマーケティング活動も素晴らしく、情緒価値だけでも差別化が難しくなってきていると感じます。そんな中で、生活者が買いたいと思うかどうかは「買物体験の良さ」でこそ差がついてくるのではないでしょうか。
買物研が最初に提唱した「買物欲」から約15年がたち、テクノロジーの進化やコロナ禍を経て、生活者の買物体験は大きく進化しています。そこで、買物研の20周年を機に改めてとらえなおしたのが、今回発表した「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」です。
山﨑(HAKUHODO EC+) この15年でEC通販もかなり普及しています。特にコロナ禍に急成長し、リアル店舗とeコマースを上手に使い分けて買物する生活者が増えました。
eコマースはリアル店舗の買物に比べると、口コミを見たり様々な商品と比較検討したり、あらゆる情報を調べて納得してから買うため、衝動買いよりも理性的な買物が多いと思われがちです。その側面も正しいのですが、たとえばSNSの進化により、ライブコマースなど衝動的な買物を誘発する新しい買物体験が生まれています。
垂水(博報堂買物研究所) 今回、買物研では買い場の変化、情報取得の変化などを深く洞察するために、「買物欲大調査」と銘打って様々な調査を行いました。具体的には、買物シーンの写真を大量に集めてインサイトを分類したり、大手出版社の元編集長の方々に事前にインタビューしたり、SNS全量データの分析を行ったりしています。
加えて、大手小売企業のバイヤーの方々にも、取材を行いました。生活者の生の声を集めることを意識し、生活者に直接N1インタビューも実施しています。これらのリサーチ結果を、延べ1万シーンにわたる定量リサーチで検証しました。その結果、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」が見つかったのです。
これらを読み解くことで、「買物欲のコントロール方法」と「買物欲を刺激する方法」という二つの観点が見えてきました。前者は、買いたい気持ちを増幅させる「BOOSTタイプ」と、買いたい気持ちが流れないように維持する「KEEPタイプ」という二種類のツボが、後者は感情に訴えかける「LOVEタイプ」と、理性や理由で訴えかける「REASONタイプ」の二種類が存在します。それぞれをかけ合わせると、次の四つのタイプに分けることが可能です。
BOOSTタイプのツボ
- LOVE&BOOST:“買いたい”を“盛り上げる”
- REASON&BOOST:“買ってもいい”を“盛り上げる”
KEEPタイプのツボ
- LOVE&KEEP:“買いたい”を“維持”する
- REASON&KEEP:“買ってもいい”を“維持”する
本記事では、この中から、EC購買体験と関係の深いツボを二つピックアップして、どのような設計が大切なのかを深掘りしようと思います。