グローバルの5倍ハッシュタグ検索をする日本のInstagram利用者
まずは、Instagramが掲げるミッションに注目してみよう。それは、「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」というものだ。「コマースの話も、すべてこのミッションに紐づいてきます」と丸山氏は語る。
Instagramの利用者数は堅調な伸びを見せており、月間のアクティブアカウント数は世界で10億、日本では3,300万に上る(2019年3月時点)。今もなお拡大し続けている状況だ。国内利用者の内訳は女性57%、男性43%となっており、友人・家族といったプライベートなつながりのみならず、ビジネスとも多数のつながりを持っている。90%以上の利用者が企業やブランドなどといったビジネスアカウントをフォロー。Instagramは「好きなもの」との接点を生むプラットフォームとして、役割を担っている状況だ。人と人が物理的な距離を保たなければならない今だからこそ、ビジネスと生活者をつなぐツールとして重要視され、より注目が集まっていると言える。
Instagramは、従来から写真・動画といったビジュアル主体で訴求することができ、生活者に「発見」を与えるプラットフォームとして機能してきた。さらに近年は発見のみならず、「検索」「比較検討」といった購買行動のあらゆるファネルで利用されるプラットフォームへと変容しつつある。なお、日本国内のInstagram利用者がハッシュタグ検索を行う回数はグローバル平均と比べて5倍多く、フィードに流れる情報を受動的に得るだけでなく、能動的に情報を収集しようと行動する傾向が見受けられる。
「コミュニティが拡大し続けるInstagramで上手に顧客にリーチし、態度変容することができれば、購買行動にも結びつきます。認知から購入までのあらゆる段階で利用者とつながることができるのがInstagramの特徴です」(丸山氏)
Instagramで実現できる「発見型コマース」とは
では、いったいどのようにInstagramを活用すれば購買に結びつけることができるのだろうか。ここから、丸山氏が「発見型コマース」の特徴と魅力について語った。
まず、いち利用者としてECで何かを買う場面を想像してみてほしい。ECサイトを訪問するのは、購入したいものがすでに決まっていて「指名買い」をする、もしくは「ほしい商品カテゴリーから商品を探し出して買う」ケースが多いのではないだろうか。
ところが、Instagramでは商品が顧客を見つけに行く「発見型コマース」を実現できる。利用者の興味関心に合わせてコンテンツが表示される仕組みであるため、「まだ知らないが、好きになりそうなもの」「ほしくなりそうなもの」を見せ、潜在的な欲求を引き出すことが可能だ。
Instagramの利用者は、「ハッシュタグ検索」に代表されるように「自分にとって好きなもの、ほしいものの情報があるのでは」と強い興味を持った状態で、コンテンツを閲覧している。その欲求に合わせ、利用者ごとの関心に合わせたパーソナライズを施した状態で情報が表示されるInstagramは、認知獲得後の興味喚起ではなく、これらを同時に行うことができる仕組みと言えよう。
Instagramのパーソナライズは、閲覧内容や過去のアクティビティなどから機械学習し、利用者ごとにカスタマイズした表示を行っている。これにより、利用者に親和性の高い内容、つまりビジネスにとっては購入可能性の高い利用者にコンテンツを表示することが可能となる。
そのため、Instagramアカウントを運営するEC事業者は、投稿や広告を通じてできるだけ多くの利用者とエンゲージメントを高めることで、より購入可能性の高い利用者へのリーチが実現できる。これは、従来の「何かのきっかけで商品を知り、ECサイトを閲覧した後に買う」といった購入体験とはまったく異なるものだ。つまり、Instagramは「その人が好みそうなもの」を先回りして表示し、認知から商品詳細情報の閲覧や購入までの流れをシームレスに誘導することができるマーケティングツールと言える。
では、実際にInstagram内でどのようにすればEC導線を設けることができるのだろうか。具体的な設定の方法は、次ページにて解説する。