全SNSのアルゴリズム理解は困難な時代 どうすればCPAを下げられるか
藤原(300Bridge) ジゲンさんとは、前回のECzine対談でPayPayのPR戦略のすごさや、SNSアカウント運用のノウハウについてお話ししました。今回もいろいろお聞きしたいのですが、そもそも前回の対談(2018年)から約6年が経ち、SNSを取り巻く環境は随分変わりましたよね。ジゲンさんは現状をどう見ていますか?
ジゲン 前回の対談では、「UGC(User Generated Content)が増えると指名検索が増えて、売上が上がる」という話をしました。当時はまだUGC活用の考えが当たり前ではなかったのでこの話をしましたが、今はかなり浸透しましたよね。これが6年の変化だなと思います。
藤原 でも、「SNSアカウントを運用しよう」「SNSマーケティングを強化しよう」という方針が出てきた際、まだ多くの企業やブランドがインフルエンサーにお願いする道を選びますよね。最初に「UGCを積み上げていこう」という考えに至る人は、まだ少ないように見受けられるのですが。
ジゲン UGCを増やす目的や、最初の一歩が見えないとそうなるんでしょうね。今の時代背景を踏まえたら、おのずと「UGCを増やして認知獲得だけでなく、購買意思決定まで促進していこう」となるはずなのですが。
まず共通認識として整理したいのは、マーケティング担当者が目指すべき理想図です。これは「CPAを0円に近づけること」ですよね。なぜなら、CPAが下がれば下がるほどより多くの顧客との出会いが生み出せるわけですから。
もちろん、新商品を出した際など、不特定多数へのアテンションが必要となる段階でUGC“だけ”に頼るのは無謀です。認知や指名検索数をスピーディーに増やしていきたいのなら、TVCMや他の広告施策も併せて検討していくべきだといえるでしょう。
しかし、広告を打つとしても「UGCを増やす最初の動機づけ」と認識できているかで、その後の成果は大きく変わります。そもそも、こうした広告施策はすべて「お金がかかり続けるもの」です。予算があるうちは良いですが、特に今はCPAが天井知らずな状態なので、広告効率もどんどん悪化していきます。
藤原 AI活用の弊害でもありますが、広告プラットフォーマーも最適化を謳いつつ、CPAを上げる方向に向かっていますからね。
大事なのは「広告費」というバケツは一個しかないと認識した上で、マーケターがそれをどう分配できるかだと思います。瞬間風速的な効果を得たいなら、バケツの中身をほぼフルで使ってTVCMを打つのもダメとはいいませんが、広告だけで得た効果は出稿を止めたらほぼ消えてしまいます。ジゲンさんがよくおっしゃる「積層」──ユーザーの脳内に留めてもらえる状況をどう作るかの視点は重要ですよね。
ジゲン まさに、UGCを積層させることが活用の重要ポイントです。藤原さんもおっしゃるように、単体の広告施策でスパイクさせても持続性は保てません。単に認知を獲得するだけでなくUGCを生み、そこから購買をどう促進していくか。さらにUGCが増えるスパイラルをどう生んでいくか。このコツがつかめると、最初に述べた「UGCが増えると指名検索が増えて、売上が上がる」という理論も理解できると思います。実際、僕が見ているクライアントの中には、UGCによって売上が3倍になったケースもありますから。
あと、僕が「UGCが重要だ」といい続ける理由は、顧客接点が増え続けていることにもあります。前回の対談では、Twitter(現X)とInstagramの話を主にしましたが、今はここにTikTokもありますし、BeRealなど新興SNSの動きも見逃せません。それぞれユーザー層だけでなくアルゴリズムも異なる中で、企業やブランドの担当者がすべてを網羅するのはもはや不可能でしょう。だからこそ、UGCで「ユーザーに委ねていく発想」が重要になると思っています。