新規獲得からリピートへの引き上げまで
ポイントは「一気にまとめて行わない」
顧客が接した広告や販促のメッセージ訴求に対してどちらのパターンで判断するのかは、受け手が感じるリスクの大きさによると考えられます。もともと、日常品などの小型な消費財では周辺経路が、家や自動車といった大型の耐久財は中心経路が使われることが多いとされていました。これをダイレクトビジネスに置き換えて考えた場合、新規顧客獲得とリピート引上に分けるときれいに当てはまります。
新規顧客獲得フェーズでの広告掲出はトライアル品であったり、オファー価格を掲示していることがほとんどです。これらの場合は広告での訴求内容を整理して、周辺経路で理解されるように組み立て、スピーディーに購買のアクションへ導くといいでしょう。新規広告でスピーディーに好イメージを持ってもらうためには、ある程度情報をそぎ落とし、シンプルに切れ味を出すことが大事です。
ただし、競争環境が激化している昨今では、正攻法の取り組みでは効力が鈍っている製品もあります。そんな場合には、控えめなトーンながらもふと目と手を止めたくなるような、「インサイト型クリエイティブ」など、別理論による手立ても有効です。
とはいえ、広告で購買に至った顧客もそのままにしておいてはいけません。それだけでは、せっかく顧客化したとしても簡単に離脱されてしまいます。そこで、連続的に中心経路に訴えかけるような情報によって、顧客啓発が深く図れるよう、スムーズに連携することが大事です。この役割は新規広告でまとめて行おうとせず、その後の引上CRMのフェーズと連携して行っていくよう、切り分けて考えると整理しやすいと思います。CRMとの連携については、別の機会で実例を交えて詳しく説明します。
一点注意しておきたいのが、広告・販促のクリエイティブ制作では、製品力を超えてまでキャッチーさを追い求めない、ということです。広告で事前期待を膨らませ顧客化に成功したとしても、事後満足を支える製品のパフォーマンスがなければ、結局離脱するだけになってしまうからです。(こちらについては過去の連載記事をご参照ください)
たとえば同カテゴリーでの他社成功事例を追いかけ、そこから表現のエッセンスをふまえて広告制作しようとするケースを業界全体通して見かけることがありますが、この場合も注意が必要です。その訴求が引き起こす事前期待は、少なくとも自社の製品力で充分な事後満足を得ることができるのか。パートナーの提案に委ねるだけでなく、クライアントサイドで最低限確認するようにしましょう。
確かな製品力をもって顧客に有用な価値をもたらすために、まずは周辺経路に働きかけるような新規広告で、顧客に手にとってもらうこと。そして、中心経路でしっかりと納得できるようにCRMで連続的に応えていくこと。この順序を忘れず、基本を踏まえたうえで、それぞれの領域において知恵を絞っていきたいものです。