事例から見るクロスセルのポイント
「客寄せ」と「継続本命」の要素を別々の製品で担う場合は、そのクロスセル率が十分高く見込める製品で設計することが前提です。そのためには、製品同士の「相性」が高いことが求められます。相性の良し悪しがどの程度ビジネスインパクトを持つのか、いくつかの事例から見ていきましょう。
総合栄養素サプリメントと生活習慣病サプリメント
新聞本紙での広告獲得を主軸としている総合栄養素サプリメントのケースです。中心ユーザー層は60~80代で、男女比率はほぼ均等。ここに、生活習慣病サプリメントをクロスセル製品として投入することになりました。デモグラフィック属性もほぼ親しく、事前想定ではメーカーからは強気な意見も出ていました。
しかし結果は、クロスセル率は1%にも至りませんでした。たとえデモグラフィック属性は同一でも、購買動機の根源である「ニーズ」は全くの別物。ユーザー層の重なりは非常に限定的でした。
コラーゲン主体のスキンケア & コラーゲン主体の美容ドリンク
コラーゲンを主力成分としたスキンケア化粧品でのケース。同じくコラーゲンを主体にした美容ドリンクを開発、コラーゲンによる美肌効を、体の内と外からダブルで狙おうというものです。ターゲット層の事前調査でも、デモグラフィックユーザー層は当然ながらほぼ同一でした。
このケースでは、10%のクロスセルが発生しました。ベース製品であるスキンケアと同一ニーズに同一のシーズで応える製品でしたので、それなりの結果ではありました。とはいえ、スキンケアを使うシーンと、飲料を飲むタイミングは同一ではないこともあり、それがクロスセル率の伸びを抑制していると考えられます。
ファンデーション & フェイスパウダー(おしろい)
最後は、手軽にキメ細かく自然な仕上がりが手に入るファンデーションに対して、その仕上がりをレベルアップさせるフェイスパウダー(おしろい)のクロスセルを狙ったケース。
この両製品は、ニーズと利用シーンともに重なっており相性は非常に良いのは言うまでもなく、販促設計次第では、おしろいを利用するユーザー層のほぼ全員にクロスセルを仕掛けることが可能です。その結果、30%を超える高いクロスセル実績を示しました。
このように、違う製品での組み合わせで取り組む場合は、最初から理屈にあった製品でビジネス設計することが極めて大事です。
以上、前回とあわせて2回にわたり、EC/通販の要点を製品の側面から解説してきました。
「商売」である以上、取り扱っている製品力以上にビジネスの規模が成長・拡大することはなく、そこを踏まえずに販促でビジネスをなんとかしようとするのは現実的ではありません。取り組むにあたっては、しっかりと製品力を見定めながら、ビジネスモデルに沿ったふたつの役割をどの製品に担わせるのか。その見極めがビジネスの成否を決めることになります。