シナラの計測技術で複雑なカスタマージャーニーを見える化する
登壇者は、アディダスショップでの購入時、アプリやバーコードを提示していないし、ポイントカードも作っていなかった。つまり、アディダス(企業)側で管理している購買履歴がなく、行動を計測しづらいユーザーだ。
仮にEC部門から計測可能な範囲で行動を見たとすると、最初のIMPスルーと、その14日後(7日後の来店は計測できない)のサイト訪問はわかるが、そのあとは「何も購入せずに離脱」ということになってしまう。
一方、リテール部門から見ると、購入日や費目、金額もわかる。しかし、何がきっかけで来店して購入しているのかわからない。
これを、ウェブ行動データと位置情報に基づくリアル行動データを組み合わせたシナラの技術を使って計測すれば、IMPスルーから7日後の来店、さらに7日後のサイト訪問、その2日後の来店まですべて捕捉できる。ECサイトと実店舗それぞれのチャネルを横断したカスタマージャーニー全体を見える化できるのだ。
「正確にいうと、位置情報ベースなので『購入』まではわかりません。測定できるのは、あくまで店舗に入ったことまでです。一方で、購入まで至っていない層も含めた人たちの行動履歴がわかるのは大きな強みといえます」
見える化で得られた結果をふまえて打つべき手とは?
カスタマージャーニーを見える化するメリットは、その結果に基づいて適切なアクションや改善が可能になることだ。その一例として「モバイル広告の総合的な評価」を挙げた。
「モバイル広告の評価指標は多くの場合、オンラインの獲得人数です。オフライン(実店舗)の獲得人数も合わせて見える化することによって、オンラインのコンバージョンであまりパフォーマンスがよくないと評価していた媒体が、実は店舗送客に大きく寄与していたことがわかるケースもあります。オンラインだけの評価でムダ打ち(に見える広告)を削減すると、来店者数を大きく減らしてしまうことになりかねません」
オンライン/オフライン誘導の最適化にも役立つ。たとえば、商品ごとに来店前後のサイト訪問比率を分析した結果を活かして、閲覧されるタイミングによってコンテンツ(商品ページ)の役割を検証し、改善を図っていくことができる。
「来店後のサイト訪問が多い商品なら、購入の後押しにより重きを置いてカートのボタンを大きくしたり、来店前のサイト訪問が多い商品なら、店舗誘導(来店促進)を重視して店舗検索や店舗ごとの在庫確認ボタンを目立つように配置したりするなど、さまざまな工夫の余地があるはずです」
最後に「見える化自体が目的になってしまわないように」と注意を促し、セッションを締めくくった。
「カスタマージャーニーの見える化は確かに面白いのですが、決してそれ自体が目的ではありません。『何のための見える化なのか』を意識して、得られた結果を先に述べたようなさまざまな対策に活かしていくことが重要です」