なぜ、施策は失敗するのか 事例に学ぶ現状のデータ分析の課題
はじめに生田氏は、現状のデータ活用における課題について、事例を交えながら解説を行った。
1つ目に挙げたのは、リピート購入を促す施策がうまくいかなかったECサイトの事例だ。ロイヤルティの高い顧客を増やそうと、顧客データを定量的に分析したところ、5回の購入で継続利用率が高まるという相関関係が見られた。そこで、4回購入しているユーザーに対し、5回目購入時の送料無料キャンペーンを実施。結果として5回目購入は増えたものの、その多くが継続利用にはつながらなかった。生田氏は問題点をこう指摘する。
「5回という数字は相関関係であって因果関係ではありません。とにかく5回買っていただければいいわけではなく、本当は『なぜ5回買ってくださったお客様は、その後も継続してくださるのか』という顧客理解が必要でした」
2つ目に挙げたのは、中古ブランド品を扱うECサイトの事例だ。売上の大半を支えるヘビーユーザーの使い勝手を向上するため、検索機能の強化が企画されていた。サイトの全体的な傾向として、検索機能がよく使われていたので、ヘビーユーザーも活用していると思い込んでいたという。
しかし、実際のユーザー行動を観察してみると、検索機能をよく使うのはライトユーザーのほうで、ヘビーユーザーはほとんど使っていないことがわかった。ヘビーユーザーは新着商品を知らせるメルマガをチェックし、好きなブランド品が入荷すればすぐに購入していた。つまり、ヘビーユーザーに有効なのは検索機能の強化ではなく、好きなブランドに合わせたメール配信など、まったく別の施策だったのだ。
この2つの例のように、「定量的なデータの扱いだけでお客様がどう使っているのか、何が起きているかを見ていくのは非常に難しい」と生田氏は述べる。これまでデータ活用といえば、集計して定量的に分析することだったが、本当の顧客の状況がわからなければどんなデータにも意味がない。顧客一人ひとりの行動が生々しくわかる形でデータを使っていくことが重要であり、そのための定性手法「デジタル行動観察」こそが、データ活用の課題へのアンサーとなる、と語った。