スタッフ一人ひとりの個性を可視化 アプローチの確度を高めるAIの活用
──こうした「個」の存在価値を生かすパルの取り組みを裏側で支えているのが、AIQの独自特許AIを活用したソリューションだとお聞きしています。AIQがパルの支援を行うようになった経緯をお聞かせください。
今井(AIQ) AIQは、独自特許をもつプロファイリングAI技術を活用し、企業のマーケティング支援を行う会社です。私自身は、企業やブランドとの親和性が高いインフルエンサーをAIで可視化し、成果に直結するインフルエンサーマーケティングサービスの立ち上げに携わってきました。
この取り組みを通じて、既存のインフルエンサーの活用に留まらず、企業に所属する熱意ある社員・スタッフをゼロからインフルエンサーとして育成できるのではないか、という仮説をもつようになりました。そこで、社員やスタッフのSNSグロースソリューションを新たな事業として立ち上げました。
パルとAIQの取り組みは、こうした知見を踏まえて、働くスタッフのSNS活用を後押しする「個性の可視化」から始まりました。AIQの技術では、スタッフ個人が運用するアカウントのフォロワーの性別・年代といった属性はもちろんながら、発信内容をデータ解析し、ワードクラウドとして可視化ができます。
たとえば、次の図はパルが運営する女性向けブランド「prose verse(プロズヴェール)」のスタッフ2名の傾向を抽出したものです。同じブランドで働いていても、小柄なスタッフの投稿には「#低身長コーデ」「#大人カジュアル」といったワードが、子どもがいるスタッフの投稿には「#産後ダイエット」「#ママコーデ」といったワードが並んでいます。


今井(AIQ) このように、AIを使ってスタッフ個人の特徴をワードクラウド化することで、パルはブランドで設定したターゲットとは異なる層からの需要や、スタッフがマイクロメディア化してどういった趣味嗜好をもつ層へ共感を醸成できているのかといった傾向を即座に理解できます。スタッフの多様性を生かしたり、堀田さんが考えるスタッフによるパーソナライズ接客を推進したりする上で、お役に立てているのではないかと捉えています。

堀田(パル) オンラインでの情報発信が一般化した今は、情報が分散的に拡散します。多くのお客様に情報を届けて支持を得るには、マスの時代のように一つの起点から広げようとするのではなく、発信起点を増やすことも重要です。
スタッフのSNS活用は、パーソナライズやOne to Oneの推進だけでなく、こうした視点も踏まえた取り組みです。だからこそ、スタッフには当たり障りのない投稿ではなく「個」を大事にした発信をしてほしい、「好き」や「得意」を生かしたトピックなど、それぞれが活躍できる領域、お客様と強くつながれる接点を何か一つでも見つけようと伝えています。このデータは、その一助として機能しています。
──自社EC「PAL CLOSET」では、2023年以降、複数回にわたってパルの人気スタッフをモデルにしたAIスタッフ(ファッションメイト)を用いた実証実験が行われています。ここにも、AIQの技術が使われているのでしょうか。
今井(AIQ) はい。先ほど説明した独自の特許AI技術を用いて、各スタッフのInstagram投稿(画像・テキスト)からライフスタイル・嗜好・表現手法などを分析・学習し、まるでスタッフ本人と会話しているような自然なコミュニケーションを実現しています。
堀田(パル) スタッフがせっかく頻繁に投稿しても、それらを単なるフロー型のコンテンツとして終わらせてしまうのはもったいないと考えていました。それらをAIにどんどん学習させ、本人さながらの接客が実現できれば、投稿が財産となるだけでなく、お客様も時間を問わず気軽に好きなスタッフへファッションに関する相談ができるようになります。これも非常におもしろく、大きな価値がある取り組みだと感じています。