リピーターにも手厚いフォローを
「化粧品公害による皮膚トラブルと向き合う」との想いから、1980年に無添加化粧品の通販を開始したファンケル。複数の直営店舗を構える現在も、EC販売を含めた通販経由の売上が50%以上を占める。
「通販は、データ管理に手間がかかる一方で、お客様の生の声を蓄積できるメリットがあります。当社はお客様の声を宝と捉え、商品開発やコミュニケーションに活用し続けてきました。これが、当社の販売の原点です」
ファンケルの通販事業の特徴は、リピート購入で成り立っている点にある。「知る、買う、届く、使う、満足する」という一連のサイクルを循環させる方針だ。とはいえ、継続的に商品を購入する熱いファンの創出は容易ではない。長谷川氏は、多くの企業が抱える課題をこう説明する。
「購入回数ごとに顧客を『新規』『ライト』『ミドル』『ヘビー』と分けた上で、特に『新規』『ライト』を手厚くサポートし、継続購入を促すケースが多いのではないでしょうか。しかし、デジタル化が進む昨今、消費者は大量の競合他社の情報に触れています。『ミドル』『ヘビー』のお客様でさえ、継続性の担保が難しい状況です。元々リピーターのお客様でも、一定期間購入がない場合は、丁寧なフォローを行う必要があります」
姿を直接見られない顧客の状況を把握するには、データ活用が欠かせない。ファンケルは収集したデータを活用し、いつ、誰に、どの媒体で、どのようなクリエイティブでアプローチするか、どのようなシナリオなら顧客が満足できるのかを常に考えてきたという。
「たとえば、商品のお届け時には、次回購入時に使えるクーポンなどを同梱しています。お届け後は、ダイレクトメールやメルマガによるアプローチで、エンゲージメントと継続性を高める顧客育成まで行うのがポイントです」
こうした施策の実行を支えているのが、顧客の注文データや行動データとシナリオを掛け合わせるCRMシステムだ。加えて、同社はMAツールも積極的に活用している。ファーストパーティデータを蓄積したDWH(データウェアハウス)とMAツールを連携。→ダイレクトメールやメルマガ、LINE、自社ECサイトのパーソナライズシステムに指示を出す仕組みだ。
「顧客へのアプローチは、必ずしも購入を促すものだけではありません。当社では、最適な商品の提案や、お客様の現在の状況を聞くといったコミュニケーションも含めて、あらゆるシナリオを動かしています。MAツールを活用したシナリオが、常時100本以上は稼働している状態です。
その上で、デジタルとアナログの使い分けも意識しています。メルマガを100万通送っても、どの程度の人が見て、意図を理解してくれたかまで把握するのは難しいでしょう。ダイレクトメールのほうが、多くの人が目を通して読み込んでくれるケースもあります」