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ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

ソーシャルコマースは買い物をどう進化させるか(AD)

10年でEC年商約10倍、500億円超を達成 パルが進めた「個×AI」戦略の全貌を紐解く

 アパレル・コスメなど、これまで店頭での接客・販売がメインとなっていた業態の企業・ブランドで、スタッフの活躍の場が広がりつつある昨今。コーディネートや使用感が問われる商材では特に、スタッフ一人ひとりの個性を強みとしたSNS集客が一般化しつつある。既に多くのファンを抱え、インフルエンサーとして店舗・ECの売上に大きく貢献するケースも見られるほどだ。今回は、こうした取り組みを全社に浸透させ、約10年でEC売上高を大きく伸ばしたアパレル企業 株式会社パルの取締役 専務執行役員 堀田覚氏と、各アカウントの運用・成長に寄与する仕組みを提供するAIQ株式会社 Marketing&Sales Div SVPの今井大貴氏に話を聞いた。

SNSなしに語れない 「PAL CLOSET」急成長の背景を振り返る

──現在、50以上のブランドを運営するパルは、SNS発信を行うスタッフの多さだけでなく、それぞれが個性を生かして投稿している点が特徴的です。こうした取り組みは、いつどのようにして始まったのでしょうか。

堀田(パル) 2015年頃に、店舗で働く一部のスタッフが自発的に活用を始めたのがきっかけです。ちょうどInstagramが日本に上陸した後、市民権をもち始めたタイミングでした。彼らのフォロワー数が徐々に増えるにつれ、来店客が増え、売上に貢献している様子が見え始め、「これはチャンスだ」と思ったのです。

 私自身、パルに入社する以前はファッションメディアに携わっていた経験もあり、スタイリストやバイヤーなど「個」が発信するコンテンツのほうが多くの人の目に触れやすい感覚をもっていました。時代の流れを見ても、「誰が語るか」が今後より重要になるはずだと感じていましたし、パルで働く個性豊かなスタッフが情報発信のノウハウを身につけ、全員が再現性をもって取り組めれば大きな強みになると考え、制度構築なども含めて推進し始めました。

株式会社パル 取締役 専務執行役員 堀田覚氏
株式会社パル 取締役 専務執行役員 堀田覚氏

──しかし、2015年当時のEC売上高は年間約50億円、EC化率も5%とまだ成長途上だったかと思います。店頭集客にも貢献するとはいえ、店舗で働くスタッフのリソースをオンライン上での発信へ使うことに対し、社内での反発などはなかったのでしょうか。

堀田(パル) まさに、当時のパルはまだプロモーションも売り方もオフライン主体でしたが、既に世の中のデジタルシフトは始まっていました。「このスタイルを変えていかなければ」「広告集客だけに頼らない新たな伝え方や売り方を模索しなければ」と考える一方で、世の中的にありがちといわれていた「店舗 vs EC」の構図にならないよう、双方で頑張る人がきちんと評価される仕組み作りをしなければという思いも、もちろんありました。

 そこで、理解を得るために全国を回って草の根活動をしつつ、フォロワー数に応じて手当を支給するなどといった評価制度の改定や、スタッフ投稿がECサイトの流入・売上にどれだけ貢献しているかを可視化する仕組みの構築、こうした活動を表彰する場の創出や教育体制の整備などを2017年から2018年頃までに行っていきました。

 奇しくもこうした体制構築をした後にコロナ禍に直面しましたが、あらかじめデータで会話ができる環境や、スタッフがオンラインでアプローチする術をもっておいたのは非常に良かったと思います。「店舗に出勤してもお客様が少ないのであれば、SNSで接客をしよう」「どんどんSNSで発信をしていこう」と呼びかけ、ECサイトに送客してもらうことで店舗で働くスタッフがEC化率向上に大きく貢献してくれました。結果、約10年でEC化率は5%から40%超に、売上も約50億円から500億円超と10倍にまで成長しています。今では、1,800人のスタッフがSNSアカウントをもち、総フォロワー数2,000万人以上の大きなコミュニティが育ちました。

スタッフ一人ひとりの個性を可視化 アプローチの確度を高めるAIの活用

──こうした「個」の存在価値を生かすパルの取り組みを裏側で支えているのが、AIQの独自特許AIを活用したソリューションだとお聞きしています。AIQがパルの支援を行うようになった経緯をお聞かせください。

今井(AIQ) AIQは、独自特許をもつプロファイリングAI技術を活用し、企業のマーケティング支援を行う会社です。私自身は、企業やブランドとの親和性が高いインフルエンサーをAIで可視化し、成果に直結するインフルエンサーマーケティングサービスの立ち上げに携わってきました。

 この取り組みを通じて、既存のインフルエンサーの活用に留まらず、企業に所属する熱意ある社員・スタッフをゼロからインフルエンサーとして育成できるのではないか、という仮説をもつようになりました。そこで、社員やスタッフのSNSグロースソリューションを新たな事業として立ち上げました。

 パルとAIQの取り組みは、こうした知見を踏まえて、働くスタッフのSNS活用を後押しする「個性の可視化」から始まりました。AIQの技術では、スタッフ個人が運用するアカウントのフォロワーの性別・年代といった属性はもちろんながら、発信内容をデータ解析し、ワードクラウドとして可視化ができます。

 たとえば、次の図はパルが運営する女性向けブランド「prose verse(プロズヴェール)」のスタッフ2名の傾向を抽出したものです。同じブランドで働いていても、小柄なスタッフの投稿には「#低身長コーデ」「#大人カジュアル」といったワードが、子どもがいるスタッフの投稿には「#産後ダイエット」「#ママコーデ」といったワードが並んでいます。

低身長スタッフの特徴(ももぞうさん)
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ママスタッフの特徴(saayaさん)
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今井(AIQ) このように、AIを使ってスタッフ個人の特徴をワードクラウド化することで、パルはブランドで設定したターゲットとは異なる層からの需要や、スタッフがマイクロメディア化してどういった趣味嗜好をもつ層へ共感を醸成できているのかといった傾向を即座に理解できます。スタッフの多様性を生かしたり、堀田さんが考えるスタッフによるパーソナライズ接客を推進したりする上で、お役に立てているのではないかと捉えています。

AIQ株式会社 Strategic Partnership部 部長 今井大貴氏
AIQ株式会社 Marketing&Sales Div SVP(Senior Vice President) 今井大貴氏

堀田(パル) オンラインでの情報発信が一般化した今は、情報が分散的に拡散します。多くのお客様に情報を届けて支持を得るには、マスの時代のように一つの起点から広げようとするのではなく、発信起点を増やすことも重要です。

 スタッフのSNS活用は、パーソナライズやOne to Oneの推進だけでなく、こうした視点も踏まえた取り組みです。だからこそ、スタッフには当たり障りのない投稿ではなく「個」を大事にした発信をしてほしい、「好き」や「得意」を生かしたトピックなど、それぞれが活躍できる領域、お客様と強くつながれる接点を何か一つでも見つけようと伝えています。このデータは、その一助として機能しています。

──自社EC「PAL CLOSET」では、2023年以降、複数回にわたってパルの人気スタッフをモデルにしたAIスタッフ(ファッションメイト)を用いた実証実験が行われています。ここにも、AIQの技術が使われているのでしょうか。

今井(AIQ) はい。先ほど説明した独自の特許AI技術を用いて、各スタッフのInstagram投稿(画像・テキスト)からライフスタイル・嗜好・表現手法などを分析・学習し、まるでスタッフ本人と会話しているような自然なコミュニケーションを実現しています。

堀田(パル) スタッフがせっかく頻繁に投稿しても、それらを単なるフロー型のコンテンツとして終わらせてしまうのはもったいないと考えていました。それらをAIにどんどん学習させ、本人さながらの接客が実現できれば、投稿が財産となるだけでなく、お客様も時間を問わず気軽に好きなスタッフへファッションに関する相談ができるようになります。これも非常におもしろく、大きな価値がある取り組みだと感じています。

フロー型コンテンツは短命ではない CPA改善、新価値創出に成功したMeta広告配信事例

──このほかにも、約10年スタッフのSNS活用や投稿を推進してきたパルとAIQの協業により実現できた施策があれば、教えてください。

堀田(パル) AIQから提案を受け、Metaと協力しながらスタッフ投稿を活用した新たな広告フォーマット「ブランドコンテンツ広告」の開拓に挑戦しました。たとえやってみたい気持ちがあっても、当社のリソースだけだとなかなかこうした新たな取り組みは難しいですが、AIQは代理店機能も有しているため、Metaとの調整や費用対効果の検証も含めてお願いできたのは非常にありがたかったです。

今井(AIQ) 2024年の「春のパルクロウィーク」で、反響が大きかったスタッフ投稿を広告クリエイティブに用いて配信したところ、12日間で1万9,929件のコンバージョンを獲得しました。新規顧客獲得CPAは2,500円を目標値としていましたが、予想以上に効率の良い152円を記録。Meta Advantage+ ショッピングキャンペーンとパートナーシップ広告活用の成功例としてMetaの事例ページにも掲載され、スタッフの投稿を資産として生かす好例ができたと捉えています。

堀田(パル) 双方のアセットを生かして、良いチャレンジができました。

春のパルクロウィークでの成果共有
クリックすると拡大します

稼げるスタッフ増で年収アップ アパレル販売員のイメージを覆したい

──こうした新たな提案をスピーディーに受け入れ、施策を次々と実行できる点がパルの強さであることを今回改めて痛感しました。

今井(AIQ) 堀田さんからいただくアイデアは、AIQにとっても学びになることが多々あります。これまで議論を進めてきた中で特に印象的だったのが、「パーソナライズECを実現できないか」という言葉です。

 AIQは、AIによって「個性」を価値に変え、企業・社会の課題解決に貢献することをミッションとしています。個性を可視化し、同じ趣味嗜好をもつお客様とのつながりをより強固なものにするという意味では、パルが推進する「パーソナライズEC」と目指す先はイコールなのではないかと、堀田さんの言葉から示唆を得ました。単にソリューションを提供するだけでなく、お互いに高め合うような関係を築けていると感じています。

堀田(パル) 私は、スタートアップと手を組むのであれば、双方の将来につながるサービスやソリューションを生み出し、一緒に世の中に新たな価値を創出していかなければ意味がないと考えています。そのため、今後もアパレルや接客の領域でまだ誰もやっていないことをAIQと一緒に見つけていきたいです。

今井(AIQ) 実は、パルの成果を見て「スタッフのSNS活用推進をしたい」といったご相談も増えています。こうしたソーシャルセリングの取り組みは、今後より幅広い業種・業態で広がっていくでしょう。

堀田(パル) 以前より、接客のフロントに立つのは「個」であることに変わりはありません。しかし、SNSの発展により「著名人よりも親しみやすさがあるスタッフのほうが信頼できるから支持したい」と考える人が増えているように感じます。

 実際に、パルでは近年、SNSで高いエンゲージメントを誇るスタッフによる企画商品を発売するなど、商品企画においてもチャレンジを続けていますが、これらが高い売上を記録しているのも事実です。今後は、このようにブランドのもとに優秀な「個」が集まり、「個人商店」のような形でそれぞれが売上を作る流れが加速するのではないか、と見ています。

 こうした変化を踏まえ、パルが目指しているのは好きや得意、これまでの経験を生かしながら楽しく働ける場の創出と、活躍に見合った評価をスタッフに返せる制度の構築・アップデートです。実際、SNSでの活動を評価に加えたことで、従来と比べて年収が倍以上に増えた若手社員も既に存在します。このように、店舗で働くスタッフの活躍の場をどんどん広げ、「販売員は年収が低い」「きつい仕事だ」といった既存のイメージを変えていけたらと思っています。

今井(AIQ) AIQは、「企業・ブランド」「スタッフ」「顧客」といったステークホルダー全員がwin-win-winになれる世界の構築を目指しています。

 たとえば、個性や魅力のあるスタッフがより活躍できる土壌を整えてプロパー消化率が上がれば、企業は増えた利益をスタッフに収入として還元することが可能です。稼げるようになればスタッフのモチベーションも上がり、さらなる売上増のループを描けるようになります。また、お客様にとっても「この人のおすすめなら間違いない」と信じられるスタッフがいれば、買い物での失敗が減り、よりブランドへの愛着が高まるでしょう。

 こうした良い連鎖を生み出せるよう、AIQは今後もソリューション開発など新たなチャレンジを続け、パルをはじめとするソーシャルセリングを推進する企業の売上拡大や、働くスタッフの経済的自立の支援を進めます。堀田さんとは「好きなことで個性を生かしてきちんと稼げる環境を作る」という価値観に近しいものを感じているため、これからもパル×AIQで良い例を一緒に作り上げていけたらと考えています。そして、こうしたソーシャルセリングのエコシステム構築に興味がある方は、ぜひAIQにご相談ください。

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提供:AIQ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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