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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2024 Autumn レポート(AD)

AIの罠にはまらない広告運用論 ROAS・ラストタッチ評価からの脱却に必要な五つの解決策を提示

わかりやすいコンバージョン指標に引っ張られない判断基準のもち方

2. ラストタッチだけで施策を評価している

 チャネルが増え、消費行動の可視化が複雑になりつつある昨今、「『コンバージョンする直前に広告と接触したか』を評価基準とする、ラストタッチだけで広告効果を計測するのは危険」だと中野氏は強調。その理由を次のように述べた。

「新規顧客は最初に広告と接触した後、検索エンジンで情報を集めたり、SNSの口コミを見たりと、購買に至るまでのジャーニーがリピーターよりも長くなる傾向にあります。ラストタッチのみに目を向けると、顧客との出会いのきっかけとなった広告や施策が軽視されてしまい、ラストタッチのみで獲得できる施策、つまりはリピーターとの接点をもちやすい施策に評価が偏るため、自らリピーター偏重を招くことになりかねません」

売上を停滞させる5つの特徴②ラストタッチだけで施策を評価している
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 そこで中野氏は、「複数のアトリビューションモデルを用いて評価をする」という解決策を提案した。

「上位ファネルの施策は、その他の施策にラストタッチを奪われやすいため、既存の指標だとなかなか正当な評価を得られません。そこで、集客施策を『ボトム施策(指名検索、リターゲティングなど)』と『ミドル施策(一般検索、SNS広告など)』に分類し、『ラストタッチ』『全接点』『全接点+クロスデバイス』といったように、複数の指標をもって分析を進めましょう」

 適切なアトリビューションを用いたことで、ある通信インフラサービスを扱う企業では、ミドル施策のラストタッチ評価を「1」とした際の全接点+クロスデバイスの変化率が、2.4倍にものぼると判明したそうだ。分析に新たな視点を加えたことで、これまで見逃していた貢献度の高い施策が可視化できた良い例だといえる。

3. 指名ワードも含めてROAS評価を行っている

 指名ワードは、ブランドや商品・サービス名を既に認知している顧客が集まるため、当然ながらコンバージョンにもつながりやすい。これを含めたROAS評価を行うのも、リピーター偏重の原因になりかねないため、注意が必要だ。中野氏は「他の施策が過小評価され、ROAS全体の数字を適正に見られなくなる」と警鐘を鳴らす。

「たとえば、費用割合で見ると5%しか出稿していない指名ワードの広告が、5割近くの収益を占めており、ROASが数千%を記録するといったケースは珍しくありません。すると、他の施策の影響が薄まって見えてしまいます。また、なんらかの理由で指名ワードの広告効率が悪化した際に全体数値も大きく下がり、他の施策の貢献度が相殺されてしまう点もこうしたROAS評価の弊害です」

 これに対する策として中野氏が提示したのは、ここまでのアドバイスでも触れてきた「そもそも広告ROASで評価しない」こと。「トータルROAS」「新規獲得相対CPA」「広告ROAS」の順に評価していく、ラストタッチだけに目を向けないといった前出のポイントは、持続的な成長を目指す広告運営において欠かせない要素だ。

4. 施策経由の新規・リピーター割合を把握していない

 ここまでの解説からもわかるように、複数の広告施策が走る中で個々の特性を踏まえたパフォーマンスに目を向けないのは、効率の悪化やリピーター偏重を自ら招いているようなものだ。新規顧客とリピーターの割合が適正なのか、投資比率を変えるべきなのかといった現状把握は「顧客IDを使って判別した上で、キャンペーンレベルで数字を見ていくのがふさわしい」と中野氏は説明。さらにこう補足した。

「キャンペーン全体のCPAは同程度でも、新規獲得相対CPAに目を向けたら何倍もの差があった、といったケースは珍しくありません。こうした点を踏まえ、Google、Criteo、Metaなどの大手プラットフォームも新規顧客獲得に特化した機能に力を入れ始めています。中長期の成長を見据えるのであれば、これらの活用は必須です」

解決アプローチ④キャンペーンレベルで新規顧客とリピート顧客の比率を見る
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5. 売上目標はあるが顧客数の目標がない

 この項目について、中野氏は西口一希氏の著書『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)の内容に触れながら「顧客数の現状把握」の大切さを説いた。

「売上は『顧客数×単価×頻度』で割り出せますが、同書によると自社の顧客数を『実際に把握していた企業は日系で43%程度』だそうです。

 顧客数がわからなければ売上を作るための掛け算が大ざっぱになり、目標数値も設定できないはずですが、大多数の企業が売上やROASを判断基準にしています。結果、短期的に売上を伸ばすような“その場しのぎ”が効いてしまい、持続的な成長につながる新規顧客の獲得や顧客理解など、中長期の成長のために必要な取り組みが後回しにされがちです」

 たとえば、昨今は物価高により商品価格そのものが上昇しているケースも少なくない。すると、販売数量は同じでも必然的に売上が上がるが、足元の顧客数に目を向けられているだろうか。中野氏はこうした例を挙げつつ、課題解決に対するアプローチとして「新規顧客数の目標を定める」といった項目を提示した。

「新規顧客数の目標がなければ、リピーター偏重に陥った際に気づきを得るきっかけや、対策を打つタイミングを逃してしまいます。成長の停滞が顕在化しないよう、常に新規顧客獲得のためにどんな工夫ができるか考えられる土壌を作りましょう」

 最後に中野氏は、各項目を振り返りながら次のようにまとめ、セッションを締めくくった。

「繰り返しになりますが、自動化によるROAS最適化は、意図しないリピーター偏重につながる恐れがあります。この意識をもって『まずはROASを疑い、“評価”ではなく“分析起点”として使いましょう』とお伝えしたいです。

 また、新規顧客数の目標を定め、施策ごとの新規率を把握しながらトータルROASが基準値を超えるまではしっかりと施策の成果を伸ばす。このようなチャレンジが未来の事業成長につながります。

 当社はEC支援に特化したサービスを提供しています。売上に停滞感をお持ちの方がいらっしゃいましたら、効果的な打開策をご提案いたしますので、ぜひサポートさせてください」

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この記事の著者

景山 真理(カゲヤマ マリ)

フリーランスのライター。EC店舗、タウン情報誌制作会社、マーケティング支援企業などへの勤務経験を経て、ウェブメディアや雑誌をはじめとする紙媒体のライティングの仕事をしています。専門領域はデジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、ECのセールスメルマガ、仕事・働きかた、デジタルトランスフォーメーションです。 ウェブ●Mari Kageyama Writing Works

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社オーリーズ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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