組合員目線で無理なDXはしないコープさっぽろ
コープさっぽろは、北海道を拠点に店舗「コープさっぽろ」や宅配システム「トドック」を展開し、2022年度の事業高は3,000億円超。200万人を超える組合員を抱え、2025年には60周年を迎える組織だ。
歴史ある組織は、従来の長所を生かしながら組合員にさらなる価値提供をするために、アナログとデジタルを融合したDXと業務効率化に挑んでいる。これらを推進するのは、株式会社東急ハンズ、株式会社メルカリなどを経て独立し、現在はプロフェッショナルCIOとして活動する同組合のCIO 長谷川秀樹氏だ。同氏は、「コープさっぽろと関連事業が組合員にとって素晴らしいサービスを提供し、従業員も気持ちよく働けるIT環境を提供する」ことを自身のミッションとし、活動しているという。
「このミッションを果たすために、組合員に対してはアナログとデジタルを使い分けます。なぜなら、組合員の平均年齢は40代後半で、60代以上の方も多くいらっしゃるからです」
ここで長谷川氏は、組合員の実態に寄り添うサービスとして移動販売車の例を挙げた。スーパーが近隣にない一部の地域に向けて、コープさっぽろは移動販売車を走らせているが、これには食材などの商品とともにATMが載せられている。すると、組合員は遠方の銀行までわざわざお金をおろしに行くことなく、現金での商品購入が実現できる。
「単なるデジタル推進だと、『電子マネーを取り入れよう』という発想になりがちですが、車で買い物に行けない高齢者の方に、これからスマートフォンをもち、電子マネーを使えるようになっていただくハードルは高いです。彼らの望む現金での支払いに対応するには、ATMが必要だと考えた結果が、信用金庫とタッグを組み、移動販売車にATMを搭載する取り組みでした。これは、いかにもコープさっぽろらしいやり方だといえます」
「生産性のため」に頑張るのはNG
一方、コープさっぽろの内部においては、人とのコミュニケーションを重視しながらもデジタル化を推進する長谷川氏。ゴールとして描いているビジョンには「透明性が高く、誰でも全体把握でき、意見がいえる会社となる」「デジタルの推進により、合理的で気持ちよく働ける環境になった結果として、生産性の向上が実現されている」といった項目が挙げられている。
ここで長谷川氏は、「生産性のために頑張るのは本末転倒」と強調。「合理的かつ気持ちよく働けるようになった結果として、生産性が高まっている状況でなければならない」と説明した上で、「取り組みを進める順番を間違えてはならない」と続けた。