多様な「決済」が受取拒否や不正注文の抑制にも
続いて登壇した瓶子氏は、決済サービスがD2C事業に貢献できるポイントを解説した。
「(カートに商品を入れたのに購入しない)カゴ落ちを防いだり、複雑な決済プロセスによる離脱を防いだり、決済プロセスの改善で売上を増やしたりすることが、『ペイパル』の大きな役目です」(瓶子氏)
ペイパルは世界200ヵ国以上で展開し、アクティブアカウント数は4億人以上。加盟店の数は約3,500万店に上る。世界の消費者を対象にした調査では、日本からの購入でカゴ落ちした理由の上位に、送料や商品価格に加えて「ペイパルによる支払い手段がなかった」ことが挙がっているという。
日本でも2020年以降、大幅に利用者を増やしており、現在のペイパルのアクティブアカウント数は約1,000万人(Paidyのアクティブアカウント数を含む)。様々な業種の加盟店がある他、ShopifyなどECプラットフォームとのパートナー連携により、加盟店側の利便性も高めている。
瓶子氏は加盟店側のペイパル導入のメリットとして「365日24時間の監視システム」を挙げた。独自でAIを活用した監視システムを構築し、不正やなりすましの被害を未然に防ぐ対策を実施している。
また、それをすり抜けてしまうケースに備えて「売り手保護制度」も用意。買い手からの未承認取引や商品・サービス未受領に関するクレームなど、トラブル発生時には適用条件を満たせばペイパルが補償する。海外展開していることや、初期費用が不要であることも利点だ。
買い手側にとっても、クレジットカード情報を店舗に伝えずに済むことや、トラブルの際に条件を満たせば補償される「買い手保護制度」などのメリットがある。
「安心・安全に決済したいというニーズが拡大しています。ペイパルは25年の実績とノウハウで独自の不正防止モデルとセキュリティシステムを磨いてきました。売り手・買い手双方に価値を提供できます」(瓶子氏)
ZENBは、2023年4月にペイパルを導入した。まだ導入から3ヵ月ほどだが、多く利用される決済手段の上位3つにペイパルが入っているという。高橋氏は「ペイパルを使うのはほぼ新規ユーザー。ペイパルが新しい顧客を連れてきたと考えており、ポテンシャルを実感している」と語る。
また、高橋氏によると、深刻な問題である受取拒否や不正注文の発生件数は、決済手段によって明らかな差があるそう。「現時点で、ZENBではペイパルを使った決済の場合そういったトラブルが発生していない」と高橋氏。
「全体を見ると不正注文は増えており、非常に頭が痛い問題です。システムで防いでいますが、それでもすり抜けるケースが多く、決済の段階でガードできると非常に助かります」(高橋氏)
D2Cビジネスには、売り手と買い手がともに利用しやすい決済手段を用意することが不可欠といえる。ZENBのように、「顧客とどのような関係を築くか」「どのような顧客に購入してほしいか」を踏まえ、適した決済サービスを導入することが成長の鍵となるだろう。