デジタル慣れした顧客の選択肢から外れない CRMに必須な3つのステップ
さらに神田氏は、直近数年の日本におけるECアプリのセッション数に言及。2020年から2022年の間に29%上昇した理由について、緊急事態宣言の発令や外出自粛要請により、オンラインで買い物をする機会が増えたことを挙げた。
「2022年後半以降、人々の動きは徐々に戻り始めましたが、デジタルの利便性を実感した顧客がEC利用を継続し、事業者もDXを推進した結果、スマートフォンアプリの利用率はさらに拡大しました。特にキャッシュレス決済などの金融系アプリが大きく伸長したといわれています。これも多くの人々がデジタルの利便性を自ら体感し、行動変容が起きた好例です。
このようにデジタルに慣れた人々が増える中で導入が遅れた事業者は、顧客の選択肢から外され、チャンスを逃してしまいます。そうした悲劇を防ぐためにも、ぜひ皆さんにはスマートフォンアプリの提供を検討いただきたいと考えています」(神田氏)
社会全体のDXが進む中、ユニクロ、ナイキ、Amazon、楽天市場といった大手ブランドもスマートフォンアプリでの購入体験構築を進めている。各社、「お得に購入できる」「ポイント還元率が高くなる」といった利益を訴求したり、LINE公式アカウントや購入画面など目に付きやすい場所での訴求を行ったりと、スマートフォンアプリに積極的に誘導する様子が見受けられる理由について、神田氏はこう補足する。
「スマートフォンアプリは、回遊性向上・セッション数増加に貢献することがデータから見えているのでしょう。購入単価や頻度が上昇すれば、ポイント高還元のオファーをしてもメリットを得ることが可能です。小売におけるスマートフォンアプリの魅力は、『最新の情報を顧客に届ける』かつ『購入体験まで完結する』点にあります。この役割を認識して、アプローチを進めると良いでしょう」(神田氏)
では、ここまで挙げたポイントを意識しながら事業者が顧客と長期的な関係構築を図るには、具体的にどういった施策を行うべきなのだろうか。神田氏は「CRMを意識した3つのステップが有効」だと説明する。
「まず大事なのは、顧客の囲い込みです。スマートフォンアプリの会員数を増やし、会員に向けて定期的な情報発信をしましょう。
次に行うべきは、顧客の知識・関心を高めることです。これにより、アクティブ率が上昇します。その上で購入体験へ促す。このステップを戦略的に構築することが非常に重要です」(神田氏)