BtoB企業にも進むスマートフォンアプリ活用 重要チャネルの1つに
Yappliは、これまで750以上のスマートフォンアプリ開発支援実績を持ち、様々な業種・業態の運用を支えている。支援先はEC事業者に限らず、小売・飲食店など多岐にわたっており、特にここ数年でプラットフォームを利用する層の拡大が進んでいるが、この状況を神田氏はこう説明した。
「コロナ禍を機に、BtoB企業が取引先とコミュニケーションや情報共有を円滑にしたいとスマートフォンアプリ開発に踏み切る事例が増えてきました。物販を手掛ける事業者だけでなく、大学や空港など特定の業種・業態にとらわれない、幅広い領域での活用が進んでいます。スピーディーかつ容易にデザインおよび運用施策を実行でき、高機能なスマートフォンアプリの制作がかなう点は、Yappliの大きな特徴です」
続いて神田氏は、EC・小売事業者におけるスマートフォンアプリの重要性について解説。「顧客と深い関係を構築しながらLTV向上を図るには、スマートフォンアプリが大変有用である」とした上で、次のように語った。
「スマートフォンアプリは、滞在時間がウェブの20倍に上るというデータも既に存在します。実際に皆さんもスマートフォンでSNSや動画を見たり、情報を検索する際にウェブブラウザではなくアプリを使うことが多いのではないでしょうか。近年、様々なウェブサービスがアプリ化を進めています。これも顧客のスマートフォンアプリ利用が加速する理由の1つといえます」(神田氏)
神田氏は、さらに「より深く長く顧客とつながりたいと考える事業者には、スマートフォンアプリ活用がおすすめ」と続ける。たとえば、ウェブサイト・ECサイトやSNSで獲得した新規顧客にスマートフォンアプリのインストールを促せば、日常的にホーム画面内にアイコンを表示し、存在感を示せる。顧客が「ブランドの情報が欲しい」「コミュニケーションをしたい」と考えた際にワンタップで接点を持てる状況は、結果的に売上向上にもつながる。
「スマートフォンアプリでこまめに情報発信を行い、つながり続ける。こうしたコミュニケーション設計を行う事業者は増えてきている印象です。重要な1つのチャネルと位置づけ、他のチャネルと使い分けを図るとなお成果につながるでしょう」(神田氏)
デジタル慣れした顧客の選択肢から外れない CRMに必須な3つのステップ
さらに神田氏は、直近数年の日本におけるECアプリのセッション数に言及。2020年から2022年の間に29%上昇した理由について、緊急事態宣言の発令や外出自粛要請により、オンラインで買い物をする機会が増えたことを挙げた。
「2022年後半以降、人々の動きは徐々に戻り始めましたが、デジタルの利便性を実感した顧客がEC利用を継続し、事業者もDXを推進した結果、スマートフォンアプリの利用率はさらに拡大しました。特にキャッシュレス決済などの金融系アプリが大きく伸長したといわれています。これも多くの人々がデジタルの利便性を自ら体感し、行動変容が起きた好例です。
このようにデジタルに慣れた人々が増える中で導入が遅れた事業者は、顧客の選択肢から外され、チャンスを逃してしまいます。そうした悲劇を防ぐためにも、ぜひ皆さんにはスマートフォンアプリの提供を検討いただきたいと考えています」(神田氏)
社会全体のDXが進む中、ユニクロ、ナイキ、Amazon、楽天市場といった大手ブランドもスマートフォンアプリでの購入体験構築を進めている。各社、「お得に購入できる」「ポイント還元率が高くなる」といった利益を訴求したり、LINE公式アカウントや購入画面など目に付きやすい場所での訴求を行ったりと、スマートフォンアプリに積極的に誘導する様子が見受けられる理由について、神田氏はこう補足する。
「スマートフォンアプリは、回遊性向上・セッション数増加に貢献することがデータから見えているのでしょう。購入単価や頻度が上昇すれば、ポイント高還元のオファーをしてもメリットを得ることが可能です。小売におけるスマートフォンアプリの魅力は、『最新の情報を顧客に届ける』かつ『購入体験まで完結する』点にあります。この役割を認識して、アプローチを進めると良いでしょう」(神田氏)
では、ここまで挙げたポイントを意識しながら事業者が顧客と長期的な関係構築を図るには、具体的にどういった施策を行うべきなのだろうか。神田氏は「CRMを意識した3つのステップが有効」だと説明する。
「まず大事なのは、顧客の囲い込みです。スマートフォンアプリの会員数を増やし、会員に向けて定期的な情報発信をしましょう。
次に行うべきは、顧客の知識・関心を高めることです。これにより、アクティブ率が上昇します。その上で購入体験へ促す。このステップを戦略的に構築することが非常に重要です」(神田氏)
スマートフォンアプリ活用で顧客交流を活性化 4つの事例を紹介
ここで神田氏は、EC・小売事業者がスマートフォンアプリを使って予想以上の成果を得た施策を7つ紹介した。今回は、そのうち4つをピックアップして紹介する。
UI・UX改善でアクティブユーザー数2倍以上に 「ライトオン公式アプリ」
ジーンズセレクトショップ「ライトオン」は、スマートフォンアプリのリニューアルにより大きな成果を得ているという。
「ライトオン公式アプリは、会員証、スタンプカード、クーポンなど店舗内で使う機能が多く搭載されているため、これらを起動後すぐに1つの画面内に表示できるよう、レイアウト変更を行いました。こうしてUI・UXを改善した結果、アクティブユーザー数が20万人から55万人と2倍以上に増加しています。また、店頭在庫をスマートフォンアプリ内で検索できるようにし、購入導線を設けたことでスマートフォンアプリ経由の売上も141%となりました」(神田氏)
顧客の興味関心に沿ったスタッフコーデ表示でアクティブ率上昇 「RC ONLINE STORE 公式アプリ」
レディースアパレルブランドを多数手掛けるレイ・カズンの「RC ONLINE STORE 公式アプリ」では、実店舗とオンライン双方で参加できるスタンプラリーを実施。来店、試着室利用、ウェブ購入などのアクションごとにポイントを付与し、楽しみながらブランドとの接点を増やすことに成功している。
「また、スマートフォンアプリ内の『STAFFコーデ』も人気コンテンツです。顧客が自分と体格・興味関心の近いスタッフを探しやすいよう、『ブランド』『身長』『骨格タイプ』などで絞り込めるようにしています。何気ない瞬間にスマートフォンアプリを開き、ウィンドウショッピング感覚で楽しめる工夫を施したことで1ユーザーあたりの1ヵ月の閲覧数が2.5回から4.5回に増加しました」(神田氏)
劇場チケット売上の20%がアプリ経由 「FANY」
吉本興業が提供するスマートフォンアプリ「FANY」は、劇場チケットのオンライン購入を実現するだけでなく、コンテンツ強化にも力を入れている。プッシュ通知から1日10分だけ閲覧できるコンテンツへ誘導することで、毎日起動するきっかけを作るだけでなく、リアルイベントでもスマートフォンアプリを活用したスタンプラリーを実施。今では、チケット売上の20%が同アプリ経由となっているとのこと。
EC売上の10%はスマートフォンアプリ経由 「岩崎本舗公式アプリ」
長崎で角煮まんじゅうを販売する「岩崎本舗」は、スマートフォンアプリダウンロード時に角煮まんじゅうを1つプレゼントするキャンペーンを実施。メディア露出情報や過去の人気メルマガのバックナンバー公開、オリジナルキャラクターと写真撮影ができるフォトフレーム提供などを行い、コミュニケーション強化を図っている。観光客向けにもオンライン購入や長崎再訪時の来店想起を図るなど、積極的にPDCAを回すことでEC売上の10%をアプリ経由で生み出しているという。
ここで神田氏は、スマートフォンアプリ支援の実績を活かしてヤプリが2021年にリリースした顧客管理システム「Yappli CRM」を紹介。スマートフォンアプリ上での顧客行動データに応じて、ノーコードでも細やかなOne to Oneコミュニケーションが実現できる旨を説明した上で、YappliとYappli CRMを組み合わせてできることを次のように説明し、セッションを締めくくった。
「たとえば、会員ランクに応じたプッシュ通知の出し分け、ポイント有効期限アラート、会員ランクアップ促進といった案内のほか、購入後のお礼や特定商品購入後に使い方をフォローするプッシュ通知配信ができます。その他、電子マネー機能、会員ランクに応じた特典付与などといったシナリオ作成もできるため、スマートフォンアプリ施策の幅を広げることも可能です。今後も各社が強固なデジタルマーケティングを実現できるよう、YappliとYappli CRMを活用した支援を進めます」(神田氏)