ECは単なるコンバージョン地点ではなく、メディアへ進化する
二つ目の進化のポイントは、「Q&Aの活用」だ。ここで挙げられたQ&Aは、FAQページのような静的なものではなく、消費者起点で発信されたレビューや質問に他者から回答や追加情報が加えられるといった、動的なものを指す。
「こうしたQ&Aは近年、モール・自社ECを問わず様々なECサイトで採用されています。消費者同士でやり取りが行われるだけでなく、そこに店舗やカスタマーサポートのスタッフが登場してその立場でなければできないアドバイスをするなど、社内外の垣根を越えたコミュニケーションの場となっています」(山崎氏)
そして三つ目に挙げられたのが、「ハッシュタグの活用」だ。多数寄せられるレビューの中から消費者が欲しい情報にスムーズにたどり着ける上、企業側も求められている情報を容易かつ適切に表示・提供できるため、注目されている。
「ハッシュタグは、今やSNSで誰もが活用するものといっても過言ではありません。この文化がSNSからコマースの領域にも拡大し、各領域のレビュー連携といった動きにもつながっています。
サードパーティCookieの規制により、従来型の広告施策による成果やECサイトへの流入低下といった課題を既にお持ちの方もいるでしょう。レビュー活用はこうした課題解決にも貢献します。たとえば、ハッシュタグで関連するレビューなどのオーガニックコンテンツを紐付ければ、SEOの評価や検索経由での流入アップにも期待ができます」(山崎氏)
ただし、ここで山崎氏はレビューを含めたUGC活用について「消費者任せにせず、あくまで企業が責任を持ってきちんと管理すべきコンテンツである」と強調する。「管理」と聞くと、マイナスなレビューを削除するといった動きを想定する人もいるかもしれないが、それは誤りだ。こうした自社にとって都合の良いレビューだけを活用する動きは、当然消費者にも見抜かれてしまう。
「謙虚さを忘れずに、耳が痛い意見も残しながら薬機法など扱う商材に合わせた法令遵守の対応や、誹謗中傷を排除する観点でレビューを管理する必要があると思います」(山崎氏)
こうした動きにより、企業のECのありかたは「コンバージョン地点」から「メディア的な存在」へと変化しつつある。情報が溢れる現代においては、カスタマージャーニーが消費者にとって非常に重要な要素となっており、選ばれるブランドになるには購入までの体験作りも重要だ。「見ているだけで楽しい、かつ購入する前に『見る・調べる』といった行動をする消費者の要望を満たすECサイトを作る視点は欠かせないと思います」とした上で、山崎氏はこう続ける。
「レビューは、業種・商材によって活用の方法が変わってきます。たとえば、アパレルは総投稿数よりも『どの頻度で新たなレビューが投稿されるか』を重視する『フロー型』のレビュー活用がふさわしいといわれています。もう一つの活用法は『アーカイブ型』ですが、今はフロー型が適しているECサイトがほとんどです。効果を得るには、一日あたりのレビュー投稿数を意識すると良いでしょう」(山崎氏)