テクノロジーが「体験」という店舗の強みをさらにアップデートさせる
レビューなどのUGC活用によりECサイトにメディアの要素が付与されると、必然的に店舗との関係性も変わってくる。「売り場」という視点から、ECサイトを店舗の競合ととらえる向きもかつてはあったが、認知獲得・情報収集のきっかけの一つととらえると、「実物を見て、手に取って試せる」といった店舗の価値は唯一無二のものだ。
「あくまでレビューは、ECサイトに不足するこれらの要素を補うものです。『実物に触れる』『接客を受ける』といった生の体験を提供するのは物理的に困難ですが、店舗の『足を運ばなければならない』『時間の制約がある』といったハードルに対して、消費者の希望するタイミングで情報を届けることができます。つまり、店舗とECは対立関係ではなく、補完関係にあるといえます」(山崎氏)
さらに山崎氏は、「店舗戦略を考える際に、『お客様目線』を中心に置いてほしい」と続ける。
「今の企業が持つOMOの課題は、『他店で買われないようにする』という視点が抜け落ちている点にあります。店頭で実物とともに接客をして、商品情報を提供したにもかかわらず、モールでレビューを見てそのまま買われてしまう。これは非常にもったいないことです。たとえば、接客の流れからその場でECサイトに誘導してレビューを見てもらう、デジタルサイネージを活用して、店舗内でもECサイト同様の詳細な情報を提供するなど、魅力を高めるアプローチ方法は多数存在します」(山崎氏)
これらを実現する上で欠かせないのが、テクノロジーだ。インデックス化しやすいECの強みを活かせば、「買いたいものがどこにあるか」といった情報も直ちに提示することができる。また、前出のレビューを介して店頭とECをつなぐといった工夫も施しやすくなる。そして、なんといっても注目すべきは「パーソナライズが可能になる」という点だ。
「スマートフォンとテクノロジーの強みを掛け合わせれば、消費者ごとに適した異なる情報を提供できます。データを収集して『提供した情報に対してどのような反応をしたか』といった効果測定を重ねれば、『実物が目の前に存在する』という従来型の店舗の強みに、『パーソナライズ化されたメディア』『体験するSNS』というような、さらなる価値を付与することが可能になります」(山崎氏)